世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」
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ソーシャルメディアのメリットとデメリット
ソーシャルメディアは、すでに多くの人にとって日常の一部になっているでしょう。遠く離れて暮らす親族や友人の近況を簡単に知ることができたり、自分が最近経験したことを多くの友人に一度に知らせることができたりと、ポジティブな側面がたくさんあるのは事実です。
私自身、米国に住んでいる傍ら、両親や妹、多くの友人は日本に住んでいるので、Xやインスタグラム、facebookなどのSNSはそんな彼らが最近どうしているのかを知るのにうってつけです。写真などを見てコメントをし、返事をもらうことで、まるで日常的に会っているような感覚にすらなることができます。
プラットフォーム側としては、使ってもらえればもらうほど儲かるので、より多くの時間を費やしてもらえるよう工夫もしています。元々は文字だけのソーシャルメディアだった場所も、写真や動画が出現し、アルゴリズムでフォローもしていない赤の他人の注目を集めている動画などもあえてタイムラインに出現させることによって、より目を引きやすくしています。友人の近況を知る目的だけだったはずが、いつの間にか、なんとなく非生産的に時間を消費し続けるだけの場所に変わりつつあるという人もいるかもしれません。
すると、ポジティブだった場所は、ネガティブな場所へと変わっていくリスクがあります。実際、ソーシャルメディアの過度な利用は、うつ病のリスクを高める可能性が指摘されています。
SNSや動画配信を見れば見るほどうつ病リスクは増加
確かによく考えてみれば、友人のポストをみて、メッセージをやりとりするだけであれば、楽しいオンライン上の社会的交流の時間と言えるかもしれませんが、全く知らない赤の他人がアップロードした動画を見ている時間は、もはや交流でもなんでもなく、コミュニティとのつながりを強化するどころか、孤独な時間を増やしているだけなのかもしれません。
あるいは、ソーシャルメディアが直接的にネガティブな作用を持つ場合もあるでしょう。例えば、他人との比較による自己評価の低下や、ネット上の誹謗中傷に遭遇することが挙げられます。こうした場合、直接的に不安やストレスを感じ、心を害することになるでしょう。
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