実際、ソーシャルメディアの使用とうつ病の関係性を評価した研究が複数あり、概ねその相関が知られています(参考文献1,2)。中には、ソーシャルメディアを使う時間が増えれば増えるほど、うつ病のリスクが増加するという、いわゆる「量反応関係」を示した研究もあります(参考文献3)。適材適所ならいいかもしれませんが、使いすぎたり、ネガティブな経験をしたりすることで、うつ病のリスクとなりうるのでしょう。
こうしたリスクとともに発症するうつ病もまた、認知症のリスクであることが知られています。うつ病は世界中の成人の約5%がもつ(参考文献4)極めてありふれた病気ですから、見過ごすことはできません。
うつ病の人は認知症のリスクが約2.41倍高い
多くの研究が示すところによれば、うつ病を経験した人は、そうでない人に比べて認知症を発症するリスクが大幅に高まります。例えば、ある大規模な研究では、うつ病のある人は認知症のリスクが約2倍になると報告されています(参考文献5)。
さらに、追跡期間が10〜14年に及ぶ7つの研究をまとめた解析でも、同様の結果が得られています。この解析では、うつ病のある人はない人に比べて、認知症のリスクが約2.25倍高いことが示されました(参考文献6)。
デンマークで行われた大規模な研究では、うつ病と診断された約24万人(中央値年齢50.8歳)と、うつ病のない約119万人を比較しました。その結果、うつ病のある人は、ない人に比べて認知症のリスクが約2.41倍高いことがわかりました(参考文献7)。さらに、このリスク増加の傾向は、うつ病の診断から20年以上経過した後でも続いていました。
このように、うつ病は大幅に認知症のリスクを上げる見逃せない要因の一つなのです。
うつ病が認知症リスクを高める正確なメカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの仮説があります。例えば、こんなものです。
1. 自己管理と社会的交流の減少
うつ病になると、健康的な生活習慣を維持することが難しくなります。例えば、食事が不規則になったり、運動をしなくなったりします。また、友人や家族との交流が減り、社会的な孤立を感じることもあります。これらは脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
2. ホルモンの影響
うつ病はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加させることがあります。コルチゾールの過剰分泌は、記憶や学習に重要な役割を持つ海馬という脳の部分を萎縮させる可能性があります(参考文献8)。
3. 炎症反応
うつ病に関連したストレスは、体内の炎症を引き起こすことも知られています。慢性的な炎症は、脳内の神経細胞にダメージを与え、認知機能の低下につながると考えられているのは、これまで繰り返し説明をしてきたとおりです。
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