フリーアナウンサーの住吉美紀さんが50代の入り口に立って始めた、「暮らしと人生の棚おろし」を綴ります。

25年食べていなかった牛肉を解禁したら...「な、なんじゃこりゃ!」50代の今、お肉は欠かせないエネルギー源【住吉美紀】_img0
 

若い頃から変わったこと、変わらないこと両方あるが、食べ物に関しては劇的に変わったと思う。25年間近く、牛肉を断っていた時期がある。高校生の頃から40歳までだ。しかし50代の今は、好物として挙げるほど、お肉が好き。牛肉食をやめるのも、再開するのも、人生の意識的な決断だった。

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大好きな「小形牧場」のお店の牛の像と。

牛肉を断つきっかけは、カナダの高校で、環境問題について詳しく学んだことだった。カナダの学校の授業は自由な部分も多く、先生によって何に重点をおいて教えるかが随分と違った。

 

私の高校の地学の先生は、毎日サファリルックにブーツスタイルで、赤いジープに乗って通勤していたミスター・ジョンソン。真っ赤な顎髭をたくわえ、授業の度にブリティッシュ・アクセントでエコロジーについて熱弁を奮うミスター・ジョンソンは、まるでイギリスの自然番組からそのまま飛び出てきたような先生だった。

日本の学校では環境問題について習ったことがなかったので、先生の授業で私は初めて知ることばかりだった。熱帯雨林の伐採、アメリカ大陸の砂漠化、ゴミによる環境汚染、オゾンホールや温暖化の話……どれも高校一年生の私には衝撃的だった。

人間、つまり私は、この社会で普通に暮らしているだけでこんなに地球を破壊しているのか。人間は地球にとって害虫じゃないか、と絶望した。私自身、生きていることが害なのではないかと、10代の純粋な心で真剣に思い悩んだ。何かひとつでも、自分にできることを行動に移さなくては、良心の呵責から心穏やかに暮らしていけない。しかも、何か続けていけることを。そして決断したのが「牛肉を食べない」だった。

特に大量消費のための肉牛育成が環境に強い負荷をかけていると私たちに説いていたミスター・ジョンソンは、ベジタリアンだった。もちろん、それで環境問題がなくせるわけではないのだが、私は先生から強い影響を受けた。

どうせステーキは好きじゃないし、ハンバーガーも我慢できる。毎日食事を作ってくれていた母に「私、今日から牛肉を食べないから」と突然宣言した。なぜか母は詮索も疑問視もせず「はーい」と軽い感じで私の決断を受け入れた。その日から固形の牛肉を一切断った。

家族で牛カレーの時は肉を取り除き、ハンバーグの時は代わりにチーズを食べるなど、できる範囲で、自分が決めたことに則って生活した。また、カナダでは当時既に人によって食事の嗜好が様々であることが珍しくなかったため、外食でも困ることなく過ごした。