世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」
Spotify Apple Podcasts Anchor Voicy
自転車とサッカー、この2つに共通するリスクは?
通学や通勤の手段は人それぞれ。中には毎日自転車を使っている人もいるかもしれません。私は、毎日電車と徒歩で通勤しているのですが、ニューヨーク市内には自転車のシェアサイクリングサービスが広がっており、自転車道が整備された場所も多いので、自転車は好まれる選択肢の一つになっています。運動にもなるし、一石二鳥と考える方も多いのかもしれません。そんな理由で自転車を日常的に使っている場合、ヘルメットの着用は日常的にしているでしょうか?
あるいは、子どもが習い事でサッカーをしているという人もいるかもしれません。日本人選手が海外で活躍するケースも多く見られるようになり、近年ますます人気のあるスポーツになってきたと思います。あなたのお子さんがサッカーを習っている場合、練習でヘディングを繰り返してはいないでしょうか?
一見関係のない2つの質問ですが、共通点があります。実は「頭の怪我」あるいはそのリスクという点で結びついているのです。
「頭の怪我」といっても、ヘルメットをせずにバイクに乗って事故に遭い頭を強打するような大きな怪我から、転んで少し頭をぶつけるような怪我まで、その重さは様々です。あるいは、サッカーのヘディング程度であれば、普通は頭に衝撃があるだけで頭の怪我にも分類しないかもしれません。
「実際に外見的に分かる怪我をしたか」「どういう怪我だったか」という意味ではその通りなのですが、認知症リスクという視点で見ると、話は少し変わってくるかもしれません。
これまでの研究によれば、頭の怪我を経験した人は、認知症になるリスクが約66%から84%程度の割合で高まることが報告されています(参考文献1,2)。
ヘディングは脳にダメージを蓄積する
さて、ここからは、この「頭の怪我」について具体的な事例を見ながら考えていきたいと思います。
例えば、先ほど登場したサッカーのヘディングの場合です。サッカーでは、ヘディングによってボールを頭で打つ動作が頻繁に行われます。一度の衝撃は小さいのでおそらくほとんど無視できるようなものだと思いますし、慣れたサッカー選手なら痛くも痒くもないのかもしれません。しかし、長期間にわたってこれが何度も繰り返されると、脳に慢性的なダメージが蓄積される可能性があります。これは、実際に研究でも結果として見られています。
Comment