反省を踏まえたら、いつの間にかたくさんのお仕事に恵まれた2020年
そんなこれまでの自己顕示欲のかたまりのようだった第一次坂口涼太郎エゴブームの反省を踏まえて、その後の2年間、どれだけ出番がなくても、台詞がなくても、ぼやけていても、与えられた環境でどれだけ円滑に楽しく、相手から求められていることを自分が想像しうる最大限にふくらませ、なおかつそこに自分の楽しみをいかに含ませられるかというご奉仕プレジャースタイルでお仕事を務めていたら、いつの間にか自分が会いたい人に会えたり、やりたいことができたり、自分が探していたこと以上の場所にたどり着けたりするようになり、2020年は世界においては大変な1年だったけれど、私においてはそれまでで一番お仕事をした1年になった。
これはなによりみうらじゅんさんの教えのおかげ。
いつかお礼参りができたらいいな、と思っていたところ、「行列のできる法律相談所」というテレビ番組に参加することになり、「ポジティブでいられる秘訣はなんですか?」という質問に、「みうらじゅんさんに教わった『自分なくし』をして、自分をあきらめてあきらかにしていくことです」と回答すれば、なんと番組のスタッフさんから「みうらじゅんさんに会いにいきませんか?」というご提案をいただいた。
私は願ったり叶ったりなこの展開に興奮し、この興奮も「そもそもはない、そもそもはない」とみうらさんから教わった呪文を唱えて言い聞かせながら、意気揚々とみうらさんの事務所に参拝することになった。
みうらさんと、みうらさんの秘書を務められているラブドールの絵梨花さんに贈る花束を携えて、2020年10月吉日、有限会社みうらじゅん事務所のインターホンをピンポーンと鳴らせばガチャッと扉が開帳し、そこには“ホームステイ”により立派にお髭を蓄えられ、“ヒゲラルキー”的にいえば私より遥かに上をゆくご本尊みうらじゅん様がいらっしゃり、私は思わず合掌したのだった。
テレビやYouTubeや雑誌で見ていたみうらさんの秘密基地めく事務所の中には「みうらじゅんフェス」で出展されていたようなあらゆるおもしろきものがひしめいていて、気になるものを伺ってゆけば、おそらく500日500晩かかるだろうという懸念が湧き、ぐっとこらえながら、なぜ私がこちらの境内へ参拝させていただく運びになったのかという経緯をざっとお話しさせていただき、みうらさんのお話に耳を傾けた。
ないところから生まれ、必ずいつかはまたなくなるのだから、人生は暇つぶしであること。だからつまらない意地を張らずに楽しく暇をつぶしていく方がええやないのということ。みんな自分のことになると真面目になりすぎてしまい、のんきになるのはイッツ・ソー・ハードだからこそ努めてのんきに、キーポンのんき、キーポン「自分なくし」をしていこうやということを説いてくださり、最後は真面目になりすぎている自分に「ええ加減にしいや!」とツッコミを入れてのんきな気分を取り戻させてくださるツッコミ如来様を贈呈してくださり、今でも自宅の祭壇に祀り、ちょっとでも真面目になりすぎて思い詰めたり考えすぎたりしていると気づいたときはお線香をあげて、「考えたって仕方ないねん! 答えはいつも風に舞っていて、掴めないものやねん! ええ加減にしいや!」と、ずどんとツッコミを入れていただいております。
まだまだ私は道半ば。
この連載でも、どうしても途中から真面目なお涼のお顔がぬめっと出がちだけれど、「こんな恥ずかしいことばかりしている人も世の中にいるのだな。あたしってまだましだな」と思い、今日もちゃぶ台の前であなたなりのいまこの場所をおもしろがれるように、私はまだまだこの恥辱プレ……連載をつづけていきたいと思います。これからもよろしければ、じっと見つめてください。
<INFORMATION>
坂口涼太郎さん出演
映画「アンダーニンジャ」
2025年1月24日(金)公開予定
忍者は世界中に忍び、現代いまでも暗躍している。その数、約20万人――。
誰も観たことが無い“現代忍者エンターテインメント” が幕を開ける!!
太平洋戦争終結後、日本へ進駐したGHQが最初に命じたのは「忍者」組織の解体だった。それにより全ての忍者は消滅したかに見えたが、彼らは世界中のあらゆる機関に潜伏し、現代でも暗躍していた。その数は約20万人と言われている。忍者組織「NIN」に所属する末端忍者・雲隠九郎(下忍)。暇を持て余していた彼はある日、ある重大な “忍務” を言い渡される。それは戦後70年以上に渡り地下に潜り続けている、ある組織の動きを調べること。その名は――「アンダーニンジャ」。忍術、知略、そして最新テクノロジー。すべてを駆使した、かつてない戦いが今、始まる――‼
原作:花沢健吾「アンダーニンジャ」(講談社「ヤングマガジン」連載)
脚本・監督:福田雄一
プロデューサー:若松央樹、大澤恵、松橋真三、鈴木大造
文・スタイリング/坂口涼太郎
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/齊藤琴絵
協力/ヒオカ
構成/坂口彩
前回記事「「これ私じゃなくてもいいのでは」自分は大物という驕りから転落、私が自虐のかたまりとなった日々のこと【坂口涼太郎エッセイ】」>>
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