プロバイオティクス 


同様に期待されているサプリメントとして、プロバイオティクスがあります。プロバイオティクスとは人の腸に存在して健康に有益な効果をもたらすかもしれないと考えられている腸内細菌サプリメントの総称です。実際、「腸は第二の脳」と言われることもあるぐらい、腸は脳と密接に関わり合っていることが知られています。

最近の研究では、腸内細菌のバランスが脳の炎症や細胞の死に関与して、認知症のリスクに影響を与える可能性が指摘されてきています(参考文献4)。このため、こうした試験管や動物実験レベルの根拠をもとに、プロバイオティクスが認知症予防に有効と宣伝されている場合があります。
 

 


健康にいい腸内細菌が認知症にも効くかは未知数


しかし、実際のところ人間レベルでプロバイオティクスが認知症予防に有効であったと示した試験はありません。仮に有効であるとしても、具体的にどのような腸内細菌が認知症予防に有効なのか、果たしてそれはサプリメントで補えるのか、補えるとしてどのぐらいの量を補えば良いのかなどといった点について、それを明らかにした研究は行われていません。

オメガ3、プロバイオティクス…そのサプリ、本当に認知症予防になっていますか?【山田悠史医師】_img0
写真:Shutterstock

だからと言って、仮説を信じてヨーグルトや発酵食品を食べることは悪いことではありませんが、認知症予防と称して高額で売られたサプリメントにその価値があるのかは未知数で、高いお金を支払わされているだけになってしまっている可能性があります。
 

 

オメガ3、プロバイオティクス…そのサプリ、本当に認知症予防になっていますか?【山田悠史医師】_img1

『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』
著:米マウントサイナイ医科大学 米国老年医学専門医 山田悠史
定価:本体1800円(税別)
講談社

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高齢者の2割には病気がないことを知っていますか? 今から備えればまだ間に合うかもしれません。

一方、残りの8割は少なくとも1つ以上の慢性疾患を持ち、今後、高齢者の6人に1人は認知症になるとも言われています。
これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。
カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。

ニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。


参考文献
1.    Thomas A, Baillet M, Proust-Lima C, Féart C, Foubert-Samier A, Helmer C, et al. Blood polyunsaturated omega-3 fatty acids, brain atrophy, cognitive decline, and dementia risk. Alzheimers Dement [Internet]. 2020 Mar 1 [cited 2024 Nov 10];17(3):407–16. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33090665/
2.    Andrieu S, Guyonnet S, Coley N, Cantet C, Bonnefoy M, Bordes S, et al. Effect of long-term omega 3 polyunsaturated fatty acid supplementation with or without multidomain intervention on cognitive function in elderly adults with memory complaints (MAPT): a randomised, placebo-controlled trial. Lancet Neurol [Internet]. 2017 May 1 [cited 2024 Nov 10];16(5):377–89. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28359749/
3.    Chew EY, Clemons TE, Agrón E, Launer LJ, Grodstein F, Bernstein PS. Effect of Omega-3 Fatty Acids, Lutein/Zeaxanthin, or Other Nutrient Supplementation on Cognitive Function: The AREDS2 Randomized Clinical Trial. JAMA [Internet]. 2015 Aug 25 [cited 2024 Nov 10];314(8):791–801. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26305649/
4.    Lin L, Zheng LJ, Zhang LJ. Neuroinflammation, Gut Microbiome, and Alzheimer’s Disease. Mol Neurobiol [Internet]. 2018 Nov 1 [cited 2024 Nov 10];55(11):8243–50. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29524051/

 


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