体を動かすといいことしかない
ここで強調したいのは、運動には認知機能とはまた別のところでも多くの健康上の利点があるということです。心臓の病気や糖尿病リスクの低下、筋力や骨密度の維持、気分の改善など、その利点は数えきれないほどです(参考文献5)。これらの効果は間接的に認知機能の維持にも寄与する可能性があります。
また、体を動かすという側面だけでなく、外出することで得られる社会的交流の機会も重要です。運動を通した友人との交流も、認知機能の維持に役立つ可能性があります。
どんな運動をすれば良いか?
一部の自治体や医療機関は、認知症予防に特化して、頭と体を同時に使うよう工夫した認知症予防体操を開発し、紹介しているところもあります。例えば、国立長寿医療研究センターは「コグニサイズ」という運動を提案しています(参考文献6)。もし、こういったものが楽しく続けられそうであれば、試してみるのも良いかも知れません。
また、どんな運動をするかを考える上では、続かなければその効果は期待しにくいという点も無視できません。つまり、理論上どんなに良さそうな体操でも、自分が続けられないものであればあまり意味がないということです。
好きで続けられる運動こそがベスト
逆に、自分が好きで楽しく続けられるものであればなんでも良いとも言えるかも知れません。実際、運動の種類を比較して、「これが最強の認知症予防運動だ!」と示したエビデンスがないからです。そういう宣伝を見ることがあるかもしれませんが、それは眉唾かもしれません。
私もよく患者さんから、「どんな運動をすれば良いですか?」と問われますが、そんな時には逆質問で「どんな運動が好きですか?」「どんな運動なら続けられそうですか?」と伺うようにしています。返事となる運動がベストな選択肢だと思うからです。
このように、いま運動習慣がない人は、無理のない頻度で、自分が楽しめそうな運動を初めてみるのが良いでしょう。続かなければ変えればいいのです。まずやってみることが大切です。
Comment