世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター（プロピッカー）。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』（マガジンハウス）など。
X：@YujiY0402
Podcast：山田悠史「医者のいらないラジオ」
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認知症予防にいいと宣伝される成分に本当に効果があるのか、前回に続き今回も検証してみたいと思います。
イチョウ葉エキス
ハーブのイチョウ葉もよく認知症予防の世界で宣伝されがちなサプリメントです。イチョウの葉から抽出されるエキスは、「イチョウ葉エキス」として様々な用途でサプリメントに利用されています。
古くから中国の伝統医学で用いられており、血流を改善し、抗酸化作用があるとされています。また、記憶力や集中力を高める効果があるとも宣伝されることがあります。その根拠として、一部の研究で、軽度の認知機能障害やアルツハイマー型認知症の症状を一時的に改善する可能性が示唆されたからです(参考文献1)。
しかし、このイチョウ葉エキスについては、ランダム化比較試験が繰り返し行われており、例えば3,000人以上の高齢者を対象としたランダム化比較試験では、イチョウ葉エキスを長期間摂取しても、認知症の発症リスクに有意な差は見られなかったという結果が見られています(参考文献2)。このことは、イチョウ葉エキスの有効性を完全に否定できるものではありませんが、このような結果を受けて、イチョウ葉エキスは認知症予防の文脈では無効である可能性が高いと考えられています。
副作用にも要注意
また、適切な用量でのイチョウ葉エキスの摂取は安全とされていますが、副作用が全くないわけではありません。これまでに、頭痛、めまい、胃腸の不調、アレルギー反応などが報告されています(参考文献3)。また、出血リスクを増やす可能性も指摘されており、血液凝固を妨げる薬（抗凝固薬）を服用している人や、手術を予定している人は注意が必要とされています(参考文献4)。
このように、現状のエビデンスでは、イチョウ葉エキスのサプリメントが認知症の予防や改善に有効であるとは言えない一方、リスクも全くないサプリメントではありません。そのようなサプリメントにお金を支払うのであれば、別のことにお金を使っていただいた方が有用なのかもしれません。
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