むしろ想定外を楽しむ、という心掛け
やりたい仕事が決まっていて、その仕事に邁進する。あくまでこだわって、会社を辞めてでも、やろうとする。そうした選択を否定するつもりはありません。仕事人生でそれが最も大切だと思うなら、その選択を取ればいい。
ただ、やりたい仕事が得意とは限らないし、やってみたらイメージと違った、ということもあります。そうだとしたら、考えは素直に改めたほうがいい。
20歳そこそこで見える会社や仕事の世界と、一度、入ってから見えてくる世界とは、大きく異なります。違う世界が見えてきたり、新しい世界が見えてきたりすることがきっとあるのです。
仕事人生は長いのです。間違った、と思ったなら早めに軌道修正したほうがいい。やりたいことを改めて探し求める方法もある。一方で偶然や縁や運に委ねてしまう、という方法もあると思うのです。一見、やりたくないと見える仕事だったとしても、です。
仕事は心持ち一つで大きく変わるものです。嫌だな、やりたくないな、と思って取り組む仕事がうまくいくはずがありません。だったら、好きになってみる、という方法もある。好きになる努力をする。ポジティブに眺めてみる。きっとこれはいつか役に立つと捉える。
浅田次郎さんが、とても心に沁みる話をされていました。今やっていることを好きになれない人は、案外、何をやっても好きになれないのではないかと思う、と。
人間は思い込みで生きているところが大きいのです。だったら、好きだと思い込んでしまうのも、一つの方法です。浅田さんは言っていました。「思い込み」は、人生を有意義に過ごすための道具の一つなのだ、と。
偶然や運や縁を信じてみる。与えられた仕事を好きになる
若い時代の配属は、とびきり気になるものだということは、よくわかります。意に沿うような仕事に就けるかどうか。しかし、実はこれはこの先もずっと続くのです。一つの会社にいたとしても、転職したとしても、同じ仕事、同じステージにとどまり続けることはできません。成長すれば当然、新たな仕事、新たなステージが用意されていくことになる。そのたびごとに、配属にクヨクヨしていたらどうなるか。
それよりも、新たにもらったチャンスを活かすためにも、偶然や運や縁を信じてみる。与えられた仕事を好きになる。好きになって、前向きにやってみようと考える。その姿勢が、さらなるチャンスにつながる可能性を生むのだと思います。
ここまで紹介したスーパービジネスパーソンたちが、そうだったように。
著者プロフィール
上阪 徹(うえさか・とおる)さん
1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。アパレルメーカーのワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。幅広く執筆やインタビューを手がけ、これまでに取材した著名人は3000人を超える。ブックライターとして、これまで100冊以上の書籍を執筆。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。『成功者3000人の言葉』(三笠書房 知的生きかた文庫)、『ブランディングという力 パナソニックはなぜ認知度をV字回復できたのか』(プレジデント社)、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『マイクロソフト 再始動する最強企業』(ダイヤモンド社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『職業、ブックライター。』(講談社)など著書は50冊を超える。『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』(講談社)、『突き抜けろ 三木谷浩史と楽天、25年の軌跡』(幻冬舎)などのブックライティングを担当。インタビュー集に40万部を超えた『プロ論。』(徳間書店)シリーズ、『外資系トップの仕事力』(ダイヤモンド社)シリーズ、『我らクレイジー★エンジニア』(講談社)など。2011年より宣伝会議「編集・ライター養成講座」講師。2013年、「上阪徹のブックライター」塾開講。雑誌、ウェブでは、AERA「現代の肖像」、「ゲーテ」「Forbes」「東洋経済オンライン」、などで執筆。
『彼らが成功する前に大切にしていたこと――幸運を引き寄せる働き方』
著者:上阪 徹 ダイヤモンド社 1760円
3000人以上をインタビューしてきた著者が、成功者への取材で得た驚きの仕事選び、会社選びの裏側を公開。大企業社長や起業家が語ったのは、偶然を信じ、偶然を楽しむことの大切さでした。自分らしいキャリアとは何か? その新しい視点が見つかる一冊です。
構成/金澤英恵
前回記事「32歳、専業主婦から「町工場の2代目」へ。50代になった今振り返る“感謝と戦いの日々”【諏訪貴子さん】」はこちら>>
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