涙は、デトックスのしるし
「ごめん、幸せすぎて、なんか涙が出てきちゃった」
やや鼻声で彼女は言います。
「なんかさ、毎朝早く子どもたちに起こされて、おむつ変えてごはん食べさせて着替えさせて、ママチャリ乗って、朝からげっそり疲れて……っていうのが普通だったから。
こんなにのんびり起きて、こんなに何も考えなくていい朝が来たなんて、なんか感動しちゃった。しかもこんなに綺麗な海辺で。子どもは可愛いけどさ、そう、私、朝ゆっくりコーヒーが飲みたかったの。こんな時間がずっと欲しかった。お母さんになって、もう若くなくなって、こんな朝はもう私には来ないって思ってた。今、すごい幸せ」
と。
ああ、本当にそうだよね、と私も一緒に涙ぐんだのは、今になって思えば最高のデトックスの瞬間だったと思います。
ちなみに他己紹介を簡単にさせていただくと、彼女は控えめに言っても凡人離れした美人で、ハーフで帰国子女という出自と本人の努力ゆえに5ヵ国語を話すという才女。あえて分かりやすい言葉で言うと絵に描いたようなセレブ生活をしているし、旦那さんも穏やかで優しく、娘たちも母親似で天使のように可愛い顔をしている。(ついでに0歳にしてプロのモデルデビューも果たしているという……)
でも、そんな誰もが羨むような生活は、当然ながら、単純にラッキーで手に入れたものではありません。
それは彼女のこれまでの努力や強さ、徳の結果であって、存続させるのだって簡単ではない。母として妻として社会人として、いろんな役割を精一杯こなしたうえに成り立っていて、もちろん前向きなエネルギーではあるものの、目まぐるしく過ぎていく都会の生活の中では、息抜きのタイミングはどうしても難しくなってしまう。
子どものため、家族のため、自分のために頑張り続けるのはもちろん素晴らしいことですが、人間なら、どうやっても疲労や心の澱のようなものは溜まっていきますよね。
だからこそ、デトックスする機会をしっかり作るのは心身の健康の秘訣なのかな、なんて、めずらしく弱々しく涙を拭いながらも、清々しい表情の彼女を見て思いました。
私の息子はもう6歳になりだいぶ手もかからなくなりましたが、彼女の娘たちはまだ1歳と2歳。それはもう、神経が休まる暇なんてないですよね。子育てだけでなく、バリバリ仕事をしている方、この歳になると高齢の家族の介護をしている方も、現代人の多くがそうだと思います。
去年から年1回ペースで始めたママOFF旅ですが、一番の収穫は、やはり「スイッチOFF」のコツが掴めたこと。
「ちょっと休憩」くらいではなく、日常から物理的に離れて、慣れてしまった多忙な生活をリセットするような感覚。たぶん多くのミドルエイジ女性にとって簡単なことではないし、そんな時間や費用を捻出するのだってまた一苦労ではあるのは十分理解していますが、思い切ったスイッチOFF旅、リトリート旅はぜひともおすすめしたいです。
長らくママOFF旅レポにお付き合いいただき、ありがとうございました。いよいよ人生後半に突入した40代も、年齢や環境に甘んじず、積極的に行きたい場所を巡っていきたいと思います。
前回記事「アラフォーママも"ナイトスポット”楽しんでいい?「ハメを外して引かれても…」30代最後、全力に悔いなし!」はこちら>>
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