こんにちは、編集・川端です。
ごく近しい人の隠し事や小さな嘘に気づいている、なんだけど、気づいちゃったことに自分も気づかないふりをしておきたい、そういうこと(秘密の大小あれど)みなさんあると思うのですが、「ねえ、あのさあ、もしかして……」と切り出せるほうですか? 私は、たぶん、9/10くらいの割合で言葉にしない(できない)ほうです、、、。

井上荒野さんの文庫『そこへ行くな』は、言おう言おうと思いつつ、これを言ったら関係が壊れちゃうかなと思って言わなかったことを言う、とか、悪口を書かれているってわかっているのにそのサイトを見ちゃう、とか……そんな一線を踏み越えるタイミングを描いた短編小説です。
1話目の「遊園地」は、同居し(籍は入れていないけど)家族として暮らしている男性が、もしかして、他にもう一つ家庭があるのでは……と気づいてしまった女性の話。
その他の章も「サークル」「病院」「団地」……など、ある特定の“囲い”の中で、これを言ったらココにいられなくなるかも、と言う一線をこえるかこえないかを淡々と描いた短編集です。
タイトル通り「そこへ行くな」なものもあるけど、いってしまって正解、なものもあるかな。あれ、ここで終わり⁉と戸惑うようなタイミングで終わっていたりして、勧善懲悪・気分爽快な小説ではないですが、不思議と気持ちの軽くなる小説です。そのくらい、言わんでおこうと封じ込めていることが、生きていると多いのかもしれませんね。


しばらくこちらでの本紹介をあまり書けていませんでしたが、再開したいと思います! またどうぞ見に来てくださいね。
ではではまた〜。
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