米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

※写真はイメージカットです 写真:shutterstock

5歳の頃からバレエを習いはじめた私にとって、興味深いドキュメンタリーが公開されるということで、『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』を鑑賞しました。
これは9歳から19歳までを対象としたバレエコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ」に挑戦する子どもたちの日常を追いかけた作品。

 

もちろん私にとって親しみのある世界ではあるのですが、もう驚きの連続でした。とにかくレッスンの仕方が私たちの時代と全然違うんです。スケボーのようなものに乗って回転の練習をするなんて、そんな発想自体がなかった!
「今は足の甲を伸ばすためのこんな器具もあるんだ!」なんて、感心することばかり。足指にインプラントを埋め込むバレエダンサーが登場する、ヒキタクニオさんの小説『My name is TAKETOO』を思い出したりもしましたね。

あらためて感じたのは、バレエの過酷さ。走って跳んで、筋肉量や柔軟性、持久力もすべてスポーツの域でありながら、高い芸術性を求められる。私もボロボロになりながらレッスンをしていたし、バレエ経験者が観るといろいろな思いが込み上げてくると思います。
それぞれに個性的な子どもたちにスポットが当てられているから、バレエ未経験者でも面白く観られるはず。
教育ママ的な日本人の母親のもとで頑張る姉弟やコロンビアからニューヨークにやって来た男の子、アフリカ出身の黒人の女の子、全力で頑張ることが当たり前の世界で生きている子ばかりです。

先生は自分の生徒のことを宝だと言うけれど、みんながみんな成功するわけじゃない。発表会やコンクールのたびにお金もかかるし、家族の献身的な協力も必要です。きれい事だけでは成立しないバレエの世界を垣間見せてくれるという点でも、とても見応えのあるドキュメンタリーでしたね。
 

『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』
ニューヨークで行われる世界最高峰のバレエコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ」。入賞すれば世界の名門スクールへの奨学金や、バレエ団への入団が約束されるコンクールを追いかけたドキュメンタリー。最終審査に残った子どもたちの日々のレッスン風景や、サポートする家族たちの姿を捉えている。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。