米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

※写真はイメージカットです 写真:shutterstock

園子温監督の『ヒミズ』、決して明るい映画じゃないけれど、これは本当に観てよかった! 久しぶりに、ここまでガンガン思いっ切り本気で人を殴る映画を観たような気がします。『パッチギ!』を観たときの衝撃にちょっと似ているかも。

 

あんなに殴られて、水のなかに入ったり、泥だらけになったり……、私が演じる側だったら無理かも、風邪はひかなかった? なんて思わず心配になってしまったほど。
この映画の主人公は虐待され、親の愛を知らずに生きている中学生です。こんなにも目を背けたくなる生々しい暴力描写が続いたのだから、そろそろ救いのあるシーンがくるかな? と思っても、なかなかそういうシーンは訪れない。監督の徹底した描き方がすごいと思ったし、主人公たちがどんなにつらい目にあっていても、「実はね、私はこんなに大変なの」って内面を語り出したりしないところが、とても好きでしたね。
主演のふたりも役に入り込んでいて、ものすごいパワーを感じました。

『ヒミズ』
両親が家を出て“普通の末来”を願いながら生きている中学生の住田と、彼に思いを寄せている茶沢。住田が衝動的に父親を殺したことで、ふたりの日々が一変する。染谷将太と二階堂ふみがベネチア映画祭最優秀新人俳優賞を受賞。原作は古谷実の同名コミック。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2012年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。