ドキュメンタリー界で最注目の黒人女性監督のひとりにギャレット・ブラッドリー監督がいます。Amazon プライム・ビデオで配信中の『タイム』は今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門でノミネートを果たすなど各賞を総なめ。メガホンを取った作品にはNetflixの話題作『大坂なおみ』もあります。人間味のある彼女の作品は、私たちに強烈に語りかけてきます。

『タイム』Amazon Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios


60年の懲役刑を科せられた夫と6人の子供を持つ女性の20年の記録


ドキュメンタリー好きな人にとって、知的好奇心が擽られることが作品に触れる理由だったりします。「真実を知りたい」「究極のリアルを追求したい」「未知の世界を覗きたい」。ドキュメンタリーとはそうあるべきものなのかもしれません。でも、そう構えずに、今を生きる人を見つめて感じる楽しみ方もあるんじゃないかと思うのです。アメリカ人のギャレット・ブラッドリー監督の作品はまさにそんな作品です。

 

Amazonオリジナルドキュメンタリーとして配信中の『タイム』はフォックス・リッチとして知られる活動家の黒人女性の人生を描くもの。銀行強盗の罪で60年の懲役刑という重すぎる刑罰を科せられた夫ロバートの釈放を求めて、6人の子供を育てながら20年にわたって闘い続ける姿を1時間21分にまとめています。

『タイム』Amazon Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios

壮絶な人生物語であることは間違いないですが、リッチの想いは至ってシンプル。愛する家族が1つにまとまることを願う1人の妻で、母親で、女性の物語なのです。

映画『タイム』で使われている映像はリッチがブラッドリー監督に手渡した100時間を超えるホームビデオのアーカイブが中心です。これによって、当初予定していた短編から長編へと切り替えられたそうです。過去と現在を行き来しながら、監禁された家族の身に起こったことをリッチの一人語りで話が進んでいきます。

 
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