作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは、26歳で結婚、奇妙な義両親と二世帯住宅で暮らすことになった茉優さん(40)。苦労も多かった結婚生活のなか、予想外だった夫・英輔さんの態度を、茉優さんは消化できずにいました。果たして一家に起きた問題はどのようなものだったのでしょうか?

「義母が、義父の車いすを蹴ってトイレに…」若くして結婚、義両親と同居した妻が目撃した衝撃の一家の闇_img0
 
取材者プロフィール
 茉優さん(仮名):40歳。関東近郊在住。26歳で結婚、二世帯住宅にて義両親と同居開始。3人のお子さんの母。
英輔さん(仮名): 48歳。小学校から私立で育ち、現在は会社員

 
 


「今思えば、もっと慎重であるべきでした」

 

「結婚したのは26歳のときです。高校を出てからアルバイトをしていて、そのうちのひとつ、歯科助手のアルバイトにやりがいを感じて6年続きました。夫はその歯科クリニックの患者さんでした」

そう言って、郊外駅ビルのカフェで取材に応じてくれた茉優さん。目がくりっとしていて、優しい雰囲気の方です。

ご本人いわく「結婚当時、若く世間知らずなところがあり」、義両親と二世帯住宅に住むと夫の英輔さんに言われたときには抵抗を感じなかったといいます。実母は高校生の頃に亡くなっていて、実父は再婚されていたため、結婚について細かくアドバイスをくれるひとはいなかったそうです。夫がそうしてほしいなら、とすんなり同居に応じた茉優さん。しかし今思えば、もっと慎重になるべきだったと振り返ります。

「英輔さんは今まで私が会ったことのないタイプの人でした。初めて彼の実家に行ったとき、大きなおうちだなあと思いました。小学校からエスカレーターで私立学校に通い、IT系の会社で働いていて……私とは全く接点がない人生です。英輔さんは歯科クリニックの患者さんで、近所のお店でランチをしていて隣の席だったことがきっかけで話すようになりました。穏やかで落ち着いた彼に惹かれ、1年くらいお付き合いして、子どもができて。嬉しくて、もちろん結婚しようとなったんです」

いわゆるちょっと「いいおうち」に嫁ぐ。家はリフォーム代だけローンを組めばOK。可愛い子どもにも恵まれ、予想もしていなかった素敵で穏やかな暮らしが結婚で一気に手に入った――。

傍目にはそう見える茉優さんの結婚生活。しかし順調な滑り出しでも、どこに落とし穴があるかわからないのが夫婦関係だと、お話を聞くうちに思い出すことになります。