ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常のおしゃれについてのアイデアや思いを綴る連載です。

恐ろしくせっかちなわたしは、とっくに冬物を片付けてしまったので、ここ2、3日、着る物がありません。そんなことを家で言っていたら、7歳の甥が、「さん……よん……ええと、なんだっけ」と言いだしました。まさか三寒四温? 「ああ、それそれ、先生いってた」。

この頭と目がまんまるのおさるのジョージに、そんな高等な言葉を教えてくれる学校の先生には感謝しかありません。そして、40歳の私は言葉の意味を知りながらも、昔の人の知恵を実生活に活かせません。冬物おねがい、もどってきて。

ということで、ウチにあった、なけなしの冬物がカシミアのニットとウールのハーフコート。スカートの中にはもちろんレギンスを履いて、精一杯の厚着で外に出ましたが、やっぱり寒いです。

コート/アンクレイヴ ニット/スローン スカート/ヴェルメイユ パー イエナ バッグ/エルメス 靴/スタンクラン

そういえば、このケリーバッグはうちに来て10年以上経ちました。まったく興味を失って、冬眠している期間もありますが、こうやって事あるごとに引っ張り出されて使われると思うと、1、2年で飽きて使わなくなる“イットバッグ”に比べて、なんとコスパのいいバッグなんだろう。

 

いま流行りのサステナブルやエコレザーという名のプラスチック製のバッグは、土に還らない。本当にエコなのかあやしい謎のサステナブルがどうも腑に落ちなくて、あえて、そこには近づいてこなかったですが、好きなものを大事におばあちゃんまで使うのは、すごく小さなことだけど、地球にやさしい気がする。

 

もうすっかり革がくたくたになって、本来の凛とした風格を失ってきているものの、私の手にしっとりと馴染み、おだやかな表情になったこのバッグ。自分と一緒に年を重ねているみたいで、なんだか同志のようになってきた。わたしがすっかりおばあさんになったとき、この人はきっとシワッシワのへたっへたで、きっと隣にいる。そのときは、どんな服に合わせて持つのか、地味に楽しみだ。


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おばあさんといえば、ピグミも最近加齢が気になる12歳。ピグミもずっと生きてくれたらいいのに。

 

ピグミはまだシワはないのですが、たまにまゆげがでます。


では、また来週よかったら遊びに来てください。


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バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
 


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