やらない人にはやらない理由があってだな


読む人の「気持ち」を想像するって実はとても難しくて。もちろん100%理解することは無理なんです。私が原稿を書くときによくやるのは、真逆の考え方の人を一人想定してみる方法です。

どういうことかというと「日帰り温泉ひとり旅」をしない人を想定して、しない理由を考えてみます。皆さんも推奨したいことやモノをやらない、買わない理由を考えてみてください。

「日帰り温泉ひとり旅」をしない理由

・ひとりぼっちは恥ずかしい
・家族に気兼ねする
・運転ができない
・化粧直しが面倒
・電車の乗り継ぎを調べるのが面倒
・感想を共有できなくて寂しい
・温泉が好きじゃない
……etc.

私自身は、ひとり焼肉でもひとりカラオケでも楽しめるタイプで、恥ずかしくはないのです。だから「私は全然恥ずかしくないから。気にしなくていいじゃん」と言ってしまうと、そこで思考停止なんですよね。記事の情報量がそこで止まってしまいます。

「恥ずかしい気持ちはわからんではない」まで歩み寄ってみます。歩み寄ったうえで、「ひとりでいるのが恥ずかしい」をもう少し細かく因数分解してみましょう。

 

「恥ずかしい」の中には、「周りがカップルや家族連ればかりで気後れする」、「手持ち無沙汰で居心地が悪い」、「店員さんに気を遣わせてしまうのではないか心配」などなど……ネガティブな気持ちにさせる要因がありそうです。

 

次に想像したネガティブ要因を潰せる情報がないか考えみます。「ひとりで来てる人も多いですよ」とか「手持ち無沙汰にならないくらいの絶景が目の前に!」とか。

この方法は、自社商品のリリースやプレゼン資料を作る際にも活用できます。自社サービスを選ばない理由や買わない理由を想像して10個くらい上げてみます。ネガティブ要因を潰せる理由があれば、それを言葉にしていきます。

・他社の似たものより高い→環境にやさしい素材を使っているから
・パッケージが安っぽい→容器にかかるコストを原材料に充てているから

などですね。全部に答えられなくてもよくて、客観的にNG理由を考えて、良い言い方に変換してみることが大事です。


想像力は観察力を育んでくれる


自分とは感覚や条件が違う人を想像しながら書くことを勧める理由は、観察力を磨いてくれるからです。

 

「私は気にしない」から一歩踏み込んで、気にする人はなんで気にするんだろう、やりたくてもできない人のできないと思う理由は? ハードルが高そうって尻込みする人は、何をハードルに感じるんだろう? ……そうやって“目の付けどころ”を増やしていくんです。

「この階段は年配者やベビーカーの人には辛そう」、「男性には入りづらいかな」、「一見さんは緊張するかも」といった“気にならない私”には見えていなかったことが見えてくることがあります。本当にその人の気持ちになれるわけではないから、余計な心配やただのおせっかいになることもあるけれど、文章は多少おせっかいくらいでちょうどいい。

自分が良いと思っているものを誰かに勧めるってとても楽しいことで、熱い気持ちは熱いまま伝えるのが良いと思っています。どうぞ熱い気持ちに想像力豊かなおせっかいを添えて。

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