映画『スタッツ: 人生を好転させるツール』Netflixにて配信中 ©︎Netflix

「人はみんな病んでいる」とあの村上春樹さんも書いていたけれど。私たちがメンタルを病むのは、何かに欠けていたり劣っていたりすることだけが理由になるのではない。美しくて才能に恵まれたハリウッドスターでさえも心に闇を抱えている。現代社会において、人は皆、平等に病んでいるのではないかと感じます。

 

11月14日にNetflixで配信スタートした『スタッツ:人生を好転させるツール』は、そんな不安を抱えるすべての人に、幸せになるための考え方のメソッドをわかりやすく解説してくれるドキュメンタリー映画です。プロデューサーは『ジョーカー』のホアキン・フェニックス、監督は俳優のジョナ・ヒル。

ハリウッドで成功してなお不安障害を抱えるジョナが、33歳のときに通い出したフィル・スタッツは、世界的に有名な精神科医。フィルがメンタルの危機に瀕したクライアントたちを救うために編み出したメソッド『The Tools』を、もっと多くの人に広めるためにジョナ自らメガホンを取ったのがこの作品。

ジョナ自身は、若い頃に肥満体型をバカにされたトラウマと、2017年に弟を亡くした喪失体験が自己肯定感の低さと不安感の原因になっていたそう。

映画『スタッツ: 人生を好転させるツール』Netflixにて配信中 ©︎Netflix


「僕の人生はあなたのセラピーを受け出してから計り知れないくらいに改善された」と、ジョナ。「僕に効果があったのなら、ほかの人たちにも効果があるはずだ」というのが、彼がこの映像にするのは難しいプロジェクトをスタートさせるきっかけになった理由なのだとか。

Dr.スタッツとの対談方式で進められる撮影は難航し、制作期間は数年に及びます。このドキュメンタリーが胸を打つのは、制作途中にジョナが俳優と監督というペルソナを脱ぎ去り、Dr.スタッツのいちクライアントとして自分の最も脆い部分をカメラの前に曝け出し始めるところ。ドキュメンタリーとしての体裁を整えるためにいわば他所行きの顔をしていたジョナが、自分の弱さをカメラの前に曝け出すことによって、スタッツもまた、彼の歴史や劣等感について本音で語り始めるのです。

 
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