さて、何を勧めるべきか。奥田英朗の『ガール』は定番だと思うけど、映画化もされているし、ちょっと時代的にも古い。原田マハの『本日は、お日柄もよく』もドラマ化されたしなあ……と、手持ちのリストに線を引いていく。

だいたい働く女性向けというお題もざっくりしている。自分が仕事で行きづまったとき、本を手にするとして、はたして仕事に関連するものを読みたいだろうか。もちろん元気になれるものにふれたい気持ちもなくはないけど、何と言うか、そういう直接的なものよりも、一旦仕事のことを忘れて頭をほぐしてくれるものの方が処方箋としては最適な気もする。

 

何の作品を選ぶかもそうだけど、それ以前にどういうテイストのものをチョイスするかで、その人のセンスが測られるのだ。

 


こういうとき、フワッと脱力した、でもちょっと沁みるものをセレクトできる人は本当にセンスがいいと思う。いっそガチガチにオシャレなものの方が難しくなくて。むしろゆるいとか、脱力とか、そういう類のものの方がよっぽどセンスを問われる。

なぜなら、前者が努力の末に養ったセンスだとするなら、後者は持って生まれたものだからだ。イメージ的には、リリー・フランキーとかああいう感じ。本人は全然センスとか気にしてなさそうなのに、有無を言わさぬセンスを周囲が勝手に受け取ってしまう。リリー・フランキーはセンスの無限増殖バグだと思う。

できるなら、そっち方面で見られたい。カッコつけるのとかカッコ悪いじゃないですか、ってはにかみながらアメリカンスピリットに火をつけたい(非喫煙者です)。

でも、そういう「センスがいいとか全然狙ってないんですけどねえ……」みたいなスタンスの方が、外したときのダメージはデカい。狙っていないように見せかけて狙っているという自意識がモロバレなのが恥ずかしいし、シンプルにスベッているのがダサいからだ。リリー・フランキーはなろうとしてなれるものじゃない。この世には、生まれもってリリー・フランキー的な人と、そうじゃない人がいる。ただそれだけの話だ。