どちらの説が本当だとしても、鶏肉で一番値段が高いのは、皮をキレイに剥がされたむね肉。最初はその事実に、「日本では安いけれどパサつきがちなむね肉を、いかに美味しく食べるかをみんな考えているのに……!」と衝撃を受けました。逆に、売り手的には一番手間がかからないのが丸鶏なのでしょう。鶏はクリスマスでなくとも常にホールで売られていて、それにもかなりびっくり。
つまりフランスでは、いい鶏肉=皮のないむね肉、ということ。それがわかってからは、レストランで鶏肉のメニューを選ぶことがなくなりました。今まで何度かトライしたけれど、大概出てくるのが鶏むね肉で、ガッカリし続けたからです……。

そんなことを言いながら、マグレ・ド・カナール(鴨のむね肉)は大好きだったりします。表面にたっぷりの脂がのっていて、しっとりジューシーな味わいなのです。

蛇足ですが、この「なるべく食材に手をかけない」システムはお肉以外でもさまざまなものに反映されている気がします。例えばくるみは通常殻つきのままで、日本のように中身だけで売っているものはかなり割高。牡蠣も殻に入ったまま売られているので、すっかり自分で開けるのが得意になってしまいました。

 

お肉の話に戻りますが、骨が付いていても自分で外せばいいだけですし、残った骨からはとてもいいスープが取れるので、我が家では常に骨付き肉一択。骨のあるお肉は、まるっと煮込むと骨からもしっかり出汁が出て、塩と胡椒だけで味付けしても美味しい煮込みができ上がります。

骨付き鶏もも肉や豚ロース肉などを炒めものにする場合は、骨部分を一旦取り外し、オーブンでさっと焼いておきます。冷めたらフリーザーバッグに入れて、冷凍庫へ。ネギの青い部分、ズッキーニのヘタ、マッシュルームや人参の皮といった野菜くずも出るたびにこのフリーザーバッグに入れて、骨と野菜くずで袋がいっぱいになったら、凍ったまま大きなお鍋へ投入。水を加え、弱火で半〜1日コトコト煮込むと、旨味がいっぱいのスープができ上がります。

弱火でじっくり煮込むだけで、不要になった部分だけで作ったとは思えない、極上のスープが完成します。野菜くずや骨の内容はその時々によって違うので、毎回ちょっとずつ違う味になるのも面白いところ。

このスープは、塩、胡椒と少しのお酒で味付けをしてそのまま飲んでも十分に美味しいし、ラーメンやうどんの汁のベースにしたり、煮物に加えたりと、何にでも使えます。以前はスープを作るのにコンソメの素などを使ってましたが、いつでもこの骨&野菜くずスープがあるので、今ではほぼ買わなくなりました。

そして煮込んだ後の骨と野菜くずは、ベランダに置いてあるコンポストに入れて、堆肥作りに使います。正直なところ、骨はそう簡単に分解されず残ってしまいがち。それでも、全体的なゴミの量はだいぶ減りますし、栄養ある堆肥が完成します。大事な命をいただいているからには、使えるものはすべて利用し、少しでも捨てる部分を減らしたい。自分でできることをしながら、引き続き骨付き肉を楽しんでいこうと思っています。

冬の間は分解が遅くなるため、ちょっとお休みしていたLFCコンポスト。最近暖かくなってきたので、また再開しました!
 
撮影/Yas