人はなぜ、保険に入るのか?

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生命保険から健康保険、海外旅行、自動車や火災保険、傷害保険まで、わたしたちはたくさんの保険商品に囲まれて暮らしています。

実際、あなたはいま、何か保険に加入しているでしょうか?

ライフプランの専門家であるファイナンシャルプランナーも意見はそれぞれで、「十分な預貯金があれば保険はいらない」とアドバイスする人もいれば、「いざというときの備えとして安心を買いましょう」と加入をすすめる人もいます。

 

ただ、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、日本で生命保険に加入している人は男性で81・1パーセント、女性で82・9パーセント。8割以上の人が生命保険に加入しているのは、世界的に見てもめずらしい水準だそうです。

合理的に考えると必要なさそう⋯⋯でも、もしかして⋯⋯と。

保険商品を検討するとき、心をよぎるのが一抹の不安です。その不安をどう評価するか。その判断に深くかかわってくるのが、5大バイアスの「プライミング効果」の派生型である「インパクトバイアス(Impact bias)」です。

これは「将来、経験するかもしれない出来事の心理的な衝撃や痛みを過大に推測してしまう傾向」です。ところが、実際にことが起こってみると、人は思っていたほどのダメージは受けません。

わたしたちには自分を守るために自分の感情の状態を安定化させようとする「心理的免疫」という機能があります。しかし、わたしたちの意識はそれを無視して自分の感情を過剰に予測してしまうのです。

保険について考えるとき、わたしたちは不安に着目し、「もしかしたら⋯⋯」の想像を広げてしまいます。これは「誇張された予想(Exaggerated expectation)」と呼ばれる認知バイアスです。しかし、統計学が「世界は予想よりも普通で、心配事は起こらない」ということを教えてくれます。

たとえば、火災保険で考えてみましょう。実際、平成30年の日本での出火件数は約3.7万件でした。それに対して日本の住戸件数が全部で5759万戸。1年間で火事になる可能性を調べると、0.06パーセントになります。かなりの低い確率です。

それでも火災保険に入るべきかどうか。ここから先の判断は個人の自由ですが、不安や恐れと関係した商品選びには少なからず「インパクトバイアス」と「誇張された予想」が影響を与えます。

その点を忘れず、客観的な数字を確認してから判断を下すほうがいいかもしれません。