「年上の女性と付き合うのに、結婚を考えないわけない」


そんな井筒さんが彼を少し意識したのは、いつもメガネをかけていたツーさんが、メガネなしで現れた時のこと。この時、「あら? 目の色が薄くて、意外とイケメン?」と思ったそう。一方のツーさんは、井筒さんのことが気になっていたので、引っ越しの手伝いも快く引き受けていたのです。「わざわざ休みの日に、どうでもいい人の引っ越しは手伝わない」とはツーさんの弁。

その後もツーさんからの「美術館のチケットがあるから行きませんか」とか「蚤の市に一緒に行きましょう」など、さすがに鈍い井筒さんでも「? これは何か裏に意図があるような」と思わざるを得ないツーさんからのアタックを受けて、交際することになった二人。井筒さんが驚いたのは、交際開始から1ヵ月となった日に、ツーさんが「1ヵ月記念のプレゼント」と言って、ライターである井筒さんのために素敵なノートとペンを選んで渡してくれたことでした。

「私はいつも、仕事道具とはいえそれで何が変わることもないと、どうでもいいノートとペンを使っていたんです。だから、彼がそんな箇所まで目を配ってくれていることに驚いたのと、付き合って1ヵ月記念なんて“なんですかそれ?”みたいな記念グッズをもらったことがなかったから、すごく新鮮でした。

そしてこの時、『あらまあ、そんなご丁寧に』みたいなことを言ったら、ツーさんからは『結婚を前提に付き合っている』と返されてビックリ。『自分よりすごく年上の女性と付き合うのに、結婚を考えないわけない』と言われて、“ほう、この人はなかなか真面目でいいぞ”と思ったんです(笑)」

 

出会いから交際まで、ツーさんと井筒さんの間には温度差があったようですが、一緒にいる時間が増えるにつれ、歳の差を全く感じさせない彼の責任感の強さや思いやり溢れる精神を目の当たりにし、ツーさんへのリスペクトが増していったそう。そして結婚が決まったのも、やはりまたツーさんの優しさと思いやりの心があったからだと言います。

 

「私が1年更新のビジタービザなのに対して、彼はほぼ永住権に近いビザを持っていました。ツーさんはすごく真面目で、常に先のことを考えている人。長期的にパリで仕事をし、生活を続けて行くつもりなら、結婚して彼の家族ビザに変更することで、私の滞在身分を安定させようと言い出してくれたのです。

ある意味全くロマンチックさのかけらもない結婚理由ですが、もともと結婚にロマンチシズムを見出していなかった私にとっては、それだけ相手の立場を考えてくれる人だということの方が、心にグッと来ました」