断ることも、やりたいことも出来る年齢。なのに、まだ“チャレンジ枠”にいられるんだ


子ども向けの映画祭も戸田さんが長く手掛けてきたもの。現在は毎年秋に二子玉川で行われているそうです。

戸田:子どもたちの為に子ども目線で作られた映画を、世界中からいい映画を集めています。そこではLIVEで吹き替えをやったりするんですよ。そういった活動は若いときにはできませんでした。年を重ねてこそ、できることがあるという気付きがあったのが50歳のとき。最初のうちは大変だから「もう来年はやらない」と思ったこともありましたが、やっぱり素晴らしい映画が本当にたくさんあるから、それを子どもたちにどうしても観てもらいたいという一心なんです。

 

あとは、東日本大震災以降、お正月に取れるお休みのときに仙台のアンパンマンミュージアムにボランティアにも行っています。「こういうことをやりたい」と事務所に言って、もちろん全部にOKが出るわけではありませんが、“言ってみる”ことができるようになりました。もちろん、それは今までの積み重ねがあり、普段から仕事を真面目にやるという前提が必須です。でも今回のような大作ミュージカルに出演することと同様、自分から何かを発信していくことも面白いんです。

 

――第一線での活躍と自分発信の小さな活動と、その両方があることでバランスが取れるということでしょうか?

戸田:あんまりバランスは取れてないですけど(笑)。大きな舞台やテレビ、ドラマなどは長く続けていますが、ボランティアは専念しているわけではないですから。“やっつけ”ぽくなってしまわないか……というのは常に気にしています。でも、失敗するかもしれない、もちろん失敗しないように頑張るけれど、まだこういうチャンスがあるのならやってみようかな、という感覚。私がまだ“チャレンジ枠”にいるんだというのが発見なんです。

本当に断ってもいいし、断ることもできる、そしてやりたいことを出来る年齢になったけれど、まだチャレンジできることを“ありがたい”と思おうかなって(笑)。

「年齢は大きく書いておいてね」と笑いながらおっしゃった戸田さん。60歳を超えても“チャレンジ枠にいる”という言葉は、ミモレ世代にとって、とても力強いものです。

戸田:自分がやりたいことが、イコール新しいことなんだと思いますが、それをやり続けることが大事だから、“無理のないこと”というのが大切。そして“続けていく理由”がないと難しいですよね。どんどん身体は衰えていくわけだし、これから先何か良くなっていくことはほぼないと思っていたほうがいいという状況の中で、もし何かを始めるのであれば、関わる“対象”がいいものであることも必須だと思います。

子ども向けの映画祭も、ダウン症の子どもたちのサポートも、みんなそう。映画は大人が観ても感動するものばかりだし、ダウン症の子どもたちが楽しそうに踊る姿を見ているだけでも、泣けてくるんです。逆にこちらがパワーをもらっている気がします。