登場人物のなかに、共感できる人がいない。かといって、まったく理解できないわけでもない。それぞれ、どこかに“分かるかもしれない”という部分を潜めている。そんな不思議なドラマが、現在放送中の『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)です。

本作は、夫婦のセックスレスをテーマにした大人な恋愛ドラマ。はたから見たら幸せそうな2組の夫婦の均衡が崩れた時、残されるものは一体なんなのか。2014年放送の『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)の制作スタッフが再集結していることでも話題を集めています。

 


作品タイトルが持つ意味
 

本作を観る前は、『あなたがしてくれなくても』のあとには、“ほかの人がしてくれるからいい”的な文章が続くと思っていました。セックスレスに悩むみち(奈緒)は、同じ悩みを抱える新名(岩田剛典)と不倫関係に陥りそうな匂いを漂わせていたし、夫の陽一(瑛太)とは離婚する気がなさそうだったから。したいみちと、してくれない陽一。でも、愛はなくなったわけじゃないから、セックスは外注……(いいことではないけれど)、みたいになるのかな? と。

ただ、物語が進んでいくうちに、『あなたがしてくれなくても』の“あなた”は、みちの不倫相手・新名のことを指しているように思えてきたんです。みちと新名は、お互いにセックスレスの悩みを抱えている。それを分かち合ううちに、“情”のようなものが生まれてしまったけど、キス以上のことはまだしていないんですよね。新名は律儀な男なので、「もう、あなたには指一本触れない。だから、今までみたいにそばにいてほしい。俺にはあなたが必要なんです」と貞操を守ろうとしている(今さらですが)。果たしてみちは、新名がしてくれなくても、彼のことを好きでいられるのでしょうか。



もちろん、ただ行為が好きだという人もいると思うけれど、みちや新名にとってのセックスは“相手の愛を感じるための手段”なんですよね。だから、相手は誰でもいいわけじゃない。みちは陽一に、新名は妻の楓(田中みな実)に、愛されている実感がほしかったんです。そう考えると、みちと新名がプラトニックな関係のまま愛を育んでいけるのかがめちゃくちゃ気になる。

個人的には、『あなたがしてくれなくても』のあとには、“そばにいたい”が続くラストになってほしいと思っています。何年も一緒にいると、相手のことが好きなのか? なんて分からなくなってしまうのかもしれないけれど、それでも“そばにいたい”という気持ちが残っていればいい。吉野夫婦、新名夫婦それぞれが、納得のいくパートナーの形に出会えることを願っています。