何かを選んだなら、選ばなかった方を羨んでも仕方ない

 

ーーさきほど「結婚は因果応報、自分で選んだもの」とおっしゃいましたが、加藤さんが結婚という選択をしたときも、覚悟はありましたか?

もちろん。どちらかというと、結婚することに対して怖さがありましたし、あまり結婚したいと思っていなかったんです。だから、結婚すると決めたら、覚悟しました。なぜ決めたのかは、わからない。運命なのか、赤い糸なのか。英語で言うと「She is the one.(運命の相手)」と思ったからです。

 

子どもを持つことに関しても、覚悟をしました。子どもが出来たら、もう1回海外に活動の拠点を移すことはできないな、とかね(※1995年から7年間、単身渡米していた)。でも、子どもがいることで習うこともたくさんあります。自分の行動範囲にりんご狩りはないけれど、子どものためとなると家族で行こう、となるわけです。そして、行った後で気付くことがたくさんあるし、役にも生きる。子どもを持たなかったことでしか生まれない演技もある。人間ってのは、両方を取るのは無理なんですよね。


ーーそうなんですよね。選ばなければいけない。

どっちかしか選べない。そして選んでしまったら、選ばなかった方のことを羨ましがっても仕方がない。「独り者で気楽でいいですね」と言ったって、その人にはまた別の孤独だとかがあるかもしれないわけで。選んだ中でどうやっていくのかが人生なんだろうなっていう気はします。仕事も、「(先にオファーがあった)Aをやってなかったら、(後からオファーが来た)Bを選べたのにな」と考えても意味がない。パラレルワールドで考えると、それを選んでいなかったとしても、Bが来たとは限らないですから。Aを選んだ世界に行ったから、Bが来たと考える。自分で選んだことだから、過去は否定しても仕方がないし、僕は自分の選択を後悔していない。これで良かったと思います。

「この人、またなんかやるんかな」と思われる俳優になりたい

 

ーー加藤さんはあるインタビューで、40代半ばから、二枚目俳優のイメージをどう壊すかが課題だった、とおっしゃっていました。

二の線で行くにも勇気や覚悟がいるわけです。二の線だけで行くというのは本当に大変なこと。周りから「イタいおっさん」と思われようが、それを貫かなければいけないのでね。だけど僕はいろんなことをやってみたい、おもろいことをやってみたいという性格だから、違うものをやるという選択をしました。

もちろんアクション映画も面白いですよ。小沢の兄ぃ(小沢仁志)が還暦記念で『BAD CITY』(2022年)というアクション映画を作って、僕も(出演者として現場に)行きましたけど、60にもなってあんな肉弾戦でグアーっとやるの、しんどいよね。

ーーしんどい(笑)。

ああいう「アクションスター」になったら、それ専門でずっとやらなきゃいけないんだけど、もうちょっと楽にやらしてよっていう(笑)。もちろん(オファーが)来たらやるけど、あれ専門ではキツいだろうなと思うね。