人間の感覚に「正常」と「過敏・鈍麻」の明確な境界はない

 

私たちは、目から取り入れた視覚情報を脳で処理することにより、対象物の大きさや距離、角度などを判断します。それによって、対象物に近づいたり離れたり、ものを持ち上げて動かしたりできます。また、人と人との関係では、総合的に関係性や状況を判断して、相手との間の物理的な距離を調整することもできます。

 

しかし、あわてていてタンスの角に足の小指をぶつけて痛い思いをするなどということはよくあります。これは、脳の注意機能を別のことに使っていて、周囲へ意識が向けられなかったからだと考えられます。

このように、感覚に過敏や鈍麻などの特性を自覚していない人でも、状況しだいでは過敏や鈍麻のような状態になることはあるものです。また、落ち込んだときなどに空腹を感じないケースもあります。

つまり、感覚の感じ方(知覚)は状況や体調により揺れ動くものであり、どこからどこまでが「正常」で、どこからが「過敏・鈍麻」などの境界はないのです。

感覚自体に「いい/悪い」はないということ、そして社会で生活する上で、ある特性を持つ人が困り感を強く抱え、学校や会社に行けなかったり、人と会うことを苦手と感じたりする場合があるということを、私たちは知っておきたいですね。

感覚鈍麻の人は自分のボディイメージや対象物との距離をうまくつかめず、何かにぶつかったり、相手が想定している距離よりも近づきすぎてしまうことがあります。周りや本人がこのことを知らないと、人間関係でトラブルを抱えてしまうこともあります。