才能よりも大切な「応援したくなる人」とは?

 

——今回出版された書籍で、「マネージャーはアーティストに才能を感じるから頑張れる」といったことを、何人かのマネージャーさんが書かれていました。例えばNさんは、どんなところで才能やセンスを感じますか。

N:誰かに言われたわけでもなく、自ら人知れず努力していたのを見たときでしょうか。「あ、そんなことを考えて食事制限してたのか!」みたいなことがあるんです。最近妙によく走ってるなと思ったら、半年後に始まる作品に照準を合わせていたとか。

ピアニストの役なので「ピアノの練習してます」ならわかるんですけど、例えばそれ以外にも、ピアニストに見せるために手のエステに通っていたり。そんなこともするんだ! っていう努力をしている。本人があまりアピールしない分、それに気づいたときにびっくりします。

そういう人はやっぱり伸びるんだろうなって思いますし、特に菅田(将暉)はそういうことをさりげなく逆算して始めていますね。

——菅田さんというと「感性の人」「天性の才能の持ち主」みたいな印象があったのですが、お話を聞くとすごく「努力の人」なんですね。

N:天才肌の俳優さんって、実はそんなにいない気がするんです。菅田も、本当にめちゃめちゃ地味な努力をすごくする人。もちろん、持って生まれた絶対的なセンスはあると思います。やっぱり、それがないとここまで来られません。ただ、努力をしていることをあまり語らないので、きっとパブリックイメージとしては天才っぽく見られやすいし、“器用だ”と思われがちかもしれないですね。

 


「人間性」が愛されてこそ輝く

 

N:あと、才能とは違うのかもしれないですけど、「人の話をちゃんと聞ける」というのも伸びる人の特徴かもしれません。どちらかの一方通行にはならずに、例えば私が意見を伝えたとしたら、「僕はこう思います」「それもいい考えですね」みたいに会話のラリーができる。「絶対嫌です」「もうこれ以外ないです」みたいに、一刀両断しない。

——人間性というのが大きいんですね。

N:絶対的に人間性は大事だと思います。やっぱり、人間を演じる仕事なので。

——「才能があれば応援できる」という言葉を本で見たときは、人間的にすごく嫌な人でも、「演技が上手いんだったら仕方ない、応援するか」っていう意味だと思ったんです。そうではないんですね。

N:人間性を見ているから「この人を応援しよう!」となるし、どんなに芝居が伸び悩んでいても人間的に魅力を感じられれば、マネージャーとしてはどうにかして押し上げてあげたい、と考えると思います。それに、役者という仕事は受身の仕事。呼ばれなければ、仕事がない。だからやっぱり、人間性が愛されてはじめて仕事がうまくいくのだと思います。