子どもを守るという本能が、組織のマネジメントに活かされる

ここで、子育てで得られる能力について、具体的に見ていきましょう。

①マネジメント能力

子育ての場面において、女性は自己の利益を超えて他者のために行動し、守っていく本能が発揮されます。真剣に子どもの幸福を考え、「家庭」という小さいですがれっきとした組織をマネジメントすることになります。

私自身、会社で部下や組織をマネジメントした経験がありますが、子育てにおけるマネジメント経験が活きたことを感じています。ただし、その本気度はまったく違いますので、会社のマネジメントは気が楽でした。部下は他人であり、「会社」という限られた時間と空間での関係ですから、マネジメントには制約があるからです。

一方で、母親と子どもの関係性は非常に強く、マネジメントに制約や限界はありません。自分しかやれる人はいないのです。全身全霊で、未発達な子どもと向き合ってマネジメントするには、根気や「あきらめない力」も必要で、人に頼ることもできないのです。

 

このマネジメント能力は、子どもの数が多ければ多いほど伸びていくことになります。

兄弟姉妹でも一人ひとり違う人間ですから、それぞれの強みをどう伸ばしていくか、それぞれの「望むこと」をどう叶えていくか、いわば「家庭」という組織に属するメンバーをどう活かしていくか、という視点が必要です。

 

近年はひとりっ子の家庭も増えていますが、私は、子どもの数が増えるほど幸福感が増え、自分の能力も向上すると考えています。もちろん、それに伴って「大変さ」も増えますが、それ以上に得るもののほうが大きいのです。

子どもの数が多いと、人間関係も多様になるという点もあります。たとえば、長男はサッカーが好き、長女はピアノが好き、次男は本が好きといった場合、母親はそれぞれの子どもや周囲の人々と関わり、多様な体験をすることになるでしょう。こうして、母親自身の世界も広がっていくのです。