「君と同じ空気が吸いたい」


そのとき、紗奈さんは1泊の国内出張とはいえ、しばし夫と離れられることに解放感を感じていたそう。その頃には仕事をしていても家にいても夫に監視されているようで、常に緊張感を持っていたからです。

「出張から帰宅して迎えられた夫に、『実は紗奈と同じ空気が吸いたくて、同じホテルに泊まってたんだよ』と言われたときは、一瞬言葉が出ませんでした。彼は嬉しそうに私を隠し撮りした後ろ姿の写真なんかを見せてくれましたが、怖くて血の気が引きました」

「ごはん攻撃」のくだりからたびたび怪しさは感じていましたが、紗奈さんの夫は「ストーカー」の気質があるのだと思います。相手が望んでいないにも関わらず「相手のため」と一方的に世話を焼く、職場で待ち伏せなどは強い束縛心の現れでしょう。

「いろいろなことが重なり、このとき夫が本当に無理になってしまって。少しの間別居をして距離を置きたいと伝えました。夫はそんなのあり得ない、夫婦は常に一緒にいるべきだと猛反対しましたが、週末は一緒に過ごすという約束だけして、ほぼ無理やり家出のように別居を始めたんです」

紗奈さんはまずビジネスホテルに泊まり、家具付きマンスリーマンションを手配。夫と離れてほっとしたものの、それでも彼は別居先の鍵を渡すことを強要したり、一日に何度も来る連絡や職場での待ち伏せは止みませんでした。

「最初に家を出たとき、実は私は離婚まで考えていませんでした。夫を完全に嫌いにはなりたくなくて、距離をおけばお互いに落ち着いて冷静になれる、元通りになれるんじゃないかと思っていたんです。でも彼は相変わらずで、約束なので週末に会うことはしましたが、どうしても嫌悪感が拭えず……」

別居から1ヶ月経過しても、紗奈さんはどうしても家に戻り夫と暮らす気になれませんでした。そして、改めてきちんと別居したいと夫に告げたそう。

すると激昂した夫は、自作の「契約書」を持ち出し、さらに紗奈さんを縛ろうと躍起になってしまったのです……。

来週公開の後編では、妻に離婚調停で無理難題を投げ、頑として離婚に応じないまま音信不通になってしまった夫の奇行をさらに詳しく伺っていきます。
 

写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
 

 

 

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