母親の2割は「自分の時間が全くない」


——羽生さんがメディアアンバサダーとして参加された「包摂性社会の再構築と少子化対策としての健康問題の重要性」の調査レポートでは、子育て中の母親のメンタルヘルスや、子育て中の方を取り巻く環境の実態が浮き彫りになっていますよね。羽生さんが驚いたことはありますか?

羽生:調査結果を見て感じたのは、「子育てが“母親の自己犠牲”が前提となっている」ということです。1日の中で自分だけのために使える時間がある曜日は「全くない」と回答した人がとても多かったんです。自由時間が23時以降という人もたくさんいて。

【参考】1日の中で自分だけのために使える時間がある曜日/時間帯はいつですか【複数回答】(n=999)

 
出所:「包摂性社会の再構築と少子化対策としての健康問題の重要性」2023年調査レポート(内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム)

羽生:私、子どもがまだ乳児だった頃、リフレッシュしたい! 泳ぎたい! と思ってプールに行ったことがあったんです。そのためには、子どもを預けなきゃいけないじゃないですか。だから、有料で一時預かりをしている託児所に1時間だけ預けて、超ダッシュでプールまで行って。その前に、1秒でも時短になるよう服の下に水着を着ていったんですけど。それでもいろいろ計算すると35分しか泳げないから、もう本当に全力で泳ぎました。

 

羽生:「煮詰まってもう限界!」と思っての行動だったんですけど、その様子を地域のママ友に見られていたらしくて。後で「羽生さんってやっぱりぶっ飛んでるね」って言われたんです。お金を払ってまで0歳児を預けて、必死でバタフライやってました! みたいな。それで、自分を最優先しているように見えたそうなんです。

 


でもその市民プール、200円なんですよ? しかも自転車で3分半のところにある。それなのに「ぶっ飛んでる」って言われるんだなと思いました。早朝か深夜、誰も見てないところでしか自分を優先しちゃいけない。そういう空気がやっぱりあって、私は午前10時半からプールに行ったから目立ってしまったのだろうと。自己犠牲が大前提、自分を最優先しちゃダメなんだと思わされることが、育児中は数限りなくありました。