自分の気持ちや生理に合う言葉を紡ぐ人を一人でも多く見つけると、読書が楽しくなります


——『ホントのコイズミさん NARRATIVE』では、哲学者の永井玲衣さんらと哲学対話をされていました。その対話の中での表現やこれまで書かれた文章でも、感情や感覚の表現がとてもお上手だなと感じました。それは書評を書いたり、気になる言葉をメモすることによって、鍛錬されていったのでしょうか。

小泉:疑問、好奇心があるからかな。「ナラティブ」という言葉も、自分自身には馴染みのない言葉だけれど、知ると聞こえてくるし見えるようになる。新しい言葉を知ると世界が広がって、自分が考えることも広がる。それはあるかもしれないです。

 

——好奇心、言葉への探究心ですかね。
 
小泉:そうですね。今読んでいる本として『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(文藝春秋)を紹介しましたが(記事末に詳細)、著者の内田也哉子さんは「あまり本を読んだことがない」とおっしゃっていましたけど、ものすごく言葉が美しいんです。海外の学校で育ったからかもしれませんが、言葉が乱れていないんですよね。知的で、すごく素敵。会って話したこと=対談にはなるんですが、その時間を自分で物語にして書いていく手法もとても良かったです。それこそ、言葉を一つ知ると世界が広がる感じですね。
 
自分の気持ちや生理に合う言葉を紡ぐ人を一人でも多く見つけると読書が楽しくなります。本を読もうと思って、最初の数ページを何度も読み返しても進まないことってありますよね。「あれ、どこまで読んだ?」「ここ読んだっけ?」「なんでこの人の言葉は入ってこないんだろう」って。だけど、その人の言葉が入ってくる人もいるんですよね。好きなアイスの味と同じ味を探す、それができるといいですよね。

 

——何度開いても1行目から読み進められない本、あります(笑)。ただ、何度も繰り返す中で突破できる瞬間もあったりして、それができた時は嬉しいですよね。
 
小泉:そうそうそう。韓国ドラマでも、3話まで突破したらめっちゃ楽しいとかありますもんね。1話を何度も見て寝て(笑)。情報が多いとノッキングを起こして時間がかかったりするんですけど、その情報がちゃんと入ったら楽しい時間が訪れる。頑張れば先に楽しいことがある。小説でも韓国ドラマでもそうですよね。ドラマ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』も名作ですが、昔の話から入るので最初入りにくいという人が結構いるらしいんですが、そこを我慢すれば面白くなる。

 


小泉今日子さんが今、読んでいる本

『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(大島真寿美著/文藝春秋)
「大島さんの『ピエタ』が大好きで、こちらもずっと読まなきゃと思っていて後回しになっていてやっと読み始めました。まだ読み終えていなんですけど、すっごい面白い。『ピエタ』もこの本も、同じ時代なんです。イタリアの芸術音楽と日本の歌舞伎。特殊な芸術に関わった人たちの話が本当に楽しいですね」

『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(内田也哉子著/文藝春秋)
「谷川俊太郎さん、坂本龍一さん、是枝裕和さんほか、也哉子さんが15人との対話から綴ったエッセイ。私との対話のパートもあるんですけど、言葉がとにかく美しい本です」
 

 

『あした死のうと思ってたのに』(吉本ユータヌキ著/扶桑社)
「いただいて読んだのですが面白くて、いい意味で今の若者の感じをキャッチできる漫画です。せつないけどちっちゃくてあたたかい感じがしました」

『猫のための家庭の医学』(山と渓谷社)
「前から猫の本は持っていましたが、家に新しく猫が増えたので、改めて猫の知識を増やそうと思って。YouTubeで獣医さんの動画を見ていたときに『もっと知りたい方はこの本を読んでください』と紹介していて買った本。勉強中です」

『築地魚河岸ブルース』(沼田学著/東京キララ社)
「築地市場で同じアングルからライティングをして定点観測的に撮影した写真集です。渋い男性ばかりでなく、女性もいたり、外国の方もいたり。かっこいいんですよね。いい本でした。この間、この本のカメラマン・沼田さんに餅をついてもらいました(笑)」


3月8日公開のインタビュー後編では、小泉さんがこれからやりたいと思っていることについてお聞きします。お楽しみに!)

インタビュー後編
「キョンキョンは居酒屋なんて行かないよね」とお客さん扱いされても「全然大丈夫です」と戦い、前に進めたことがいっぱいあります【小泉今日子】>>
 


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スタイリスト/藤谷のりこ
ヘアメイク/石田あゆみ
撮影/大坪尚人(講談社写真映像部)
取材・文/武田由紀子
構成/露木桃子
 

 
 
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