ご飯や飲みに行く時「アイドルだからそんな店行かないよね」と言われるのが悔しくて、ずっと戦ってきた感じがあるんです


——小泉さんより少し下の世代の私(1978年生まれ)ですが、ひとつ相談がありまして……。

小泉:なになに、聞かせてちょうだい。

——誰かと食事やお酒を飲みに行った時に、楽しそうに振る舞うこと、楽しくすることが大事だと思って生きていましたが、若い世代は、すでに「相手に媚びるような態度はしない」「自分は自分でいる」という姿勢の人が多いと思っていて。そもそも「人と飲みに行かない」という人も増えています。そんな中で、自分のそういう姿勢が「間違っている」「変えるべき」なのかもと悩んでしまうことがあって。小泉さんは食事やお酒の場で、悩んだり困ったりしたことはありますか。

 

小泉:私の場合、ご飯とか飲みに行く時、どこに行く時も「アイドルだからそんな店行かないよね」と言われるのが、悔しくてずっと戦ってきた感じがあるんです。例えば、舞台をやっていたら舞台畑の人から「キョンキョンはそんな汚い居酒屋なんて行かないよね」というムードになりがちなんですけど、「いや、行きますよ」「白木屋? 笑笑? 全然大丈夫ですよ」みたいな(笑)。ミュージシャンは薄暗いバーによく行ったりしますけど「全然私も行けますよ」って。そういう変な戦い方ですね。
 
どこに行ってもお客さん扱いされちゃうんです。そこを戦って、前に進めたことがいっぱいあって。それこそ誰かと対話をするなら、バーに行くのが一番早いですよね。バーで常連さんや知らないおじさんと話して、人生を話してみるのも面白かったりする。世界がすごく広がりますよね。あと、知らない職業の人の話を聞くと、なるほどと思います。自分の世界は狭いんだなと思って。
 
最近は、飲みに行かない役者さんやミュージシャンも増えたんですって。それを嘆いているおじさんはいっぱいいます(笑)。嘆きながら相変わらず楽しそうに飲んでいるおじさんを、私は微笑ましく見ています。で、時々私も悪目立ちします(笑)。

 

——(笑)飲みと対話は、非常に相性がいいですよね。おじさんたちは対話の機会をなくして、さみしがっているんですね。若い人にとっては、そういう時間がなくなることで、失われる何かもあるのかもしれません。

小泉:若い人は若い人でどこかで何かにたどり着けばいいと思います。新しい人たちが、たどり着く価値観が、どんなふうになっているのか見てみたいですよね。今やっている宮藤官九郎さんのドラマ『不適切にもほどがある!』じゃないですけど、それぞれが反省しなきゃいけないこともあるかもしれない。

特にコロナ以降、マスクをしないといけないとか、友達と手を繋ぐ時に消毒しなくちゃいけないとか、幼少期や思春期にそれを味わった人たちが、どこで何を突破していくんだろうと。そこで、もし私に何か出番があって、役立てることがあったら「おばさん出てみるね」みたいな感覚です。

 

小泉今日子さんの読書のお供
① リーディンググラス

 
 

「リーディンググラスは、ラウンド型のものはミュージアムショップで買ったもの、セルフレームのものは『ゾフ』です」
 

② 読書記録ノート

 
 

「読書用の記録ノートは、全国書店ehonのものです。書評を書いていた時があり、読んだ本を記録したり、知らなかった言葉、引っかかった言葉、あとでちゃんと意味を調べてみようと思った言葉をメモするようになりました。白いペンは、K-POP評論家の古家正亨さんの番組に出演したときにいただいたもの。思い出のフリクションボールです」


インタビュー前編
小泉今日子が教えてくれた「今、リアルに読んでいる本」「読書が楽しくなるコツ」>>
 


ジャケット¥149600、パンツ¥69300/フォルテ フォルテ(コロネット tel. 03-5216-6518) ピアス(両耳)¥118800、リング(右)¥198000、リング(左)¥88000/オー(ハルミ ショールーム tel. 03-6433-5395)


スタイリスト/藤谷のりこ
ヘアメイク/石田あゆみ
撮影/大坪尚人(講談社写真映像部)
取材・文/武田由紀子
構成/露木桃子
 

 
 
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