普通じゃない…? 妻の心境の変化

2人目の女性と子どもについては、もはや楓さんは子どもの名前以外の情報は何も知らないそうです。こちらも1人目と同じように割り切った女性なのか、今に至るまでトラブルは特にないそう。

「どう対応すべきかわからないまま、数年経ってしまいました。私が現実逃避しているだけかもしれませんが、生活に特に変わりはなく、お金に不自由するわけでも、夫がモラハラやDVを始めたわけでもなく……。

最初はもちろんショックでしたが、夫の希望に答えて子どもを産んでいたら……きっと可愛いでしょうけど、ストレスも多い生活になっていたはず。だから変な話なんですけど、その役目を他の女性がしてくれただけなら、たしかにそれはそれでよかったのかもしれないと思ったり。子どもが欲しいという夫の希望も、切実だったので」

また最近は、楓さんの娘さんが父に連れられ、他の子どもたちと交流することもあるのだそうです。

「娘曰く、『かわいいし良い子たちだよ』『パパは楽しそう』と。そんな話を聞くと……認知もしたほうがいいのでは? と思ってしまうんです。だって子どもたちに罪はなく、原因は夫にあるわけですから。これからまだまだ学費なんかもかかるでしょうし……」

 


ちなみに、非嫡子(婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども)を認知することで楓さんと娘さんに大きく影響するのは忠志さんの死後、相続についてです。

「私と娘は十分にいい暮らしをしてきました。医学部に入った娘は『兄弟なんだからお金を分けるのは構わない』と言っていて、私も財産を独り占めしたいわけでもないので、何となく気持ち悪いんです。かと言って、こちらから認知を勧めるのもどうなんだろうと思いますが……。

まだ結論は出ていません。私の考え方って変でしょうか。普通はどうするんでしょう? 本当はもっと怒ったり、離婚とかするべきなんでしょうか?」

最後に楓さんの問われ、筆者は思わず考え込んでしまいました。

もちろん大変な話であり、夫の忠志さんの行動は結婚制度に反しています。けれどお話の限りでは、これがシンプルな浮気という感じでもなく、楓さんの生活に支障はあまりないよう。当初は楓さんも傷ついたことは間違いないと思いますが、現在は怒りや恨みに苦しめられている様子もないので、であれば、無理に負の感情を持つメリットはたしかにあまりないのかもしれません。

怒る、怒らない。傷つく、傷つかない。何か起きた時にどんな感情を持ち、どんな反応をするのかは人それぞれ違いますし、自由です。

夫や相手の女性たちを許す、許さない。認知を許す、許さない。あるいは離婚も含め、楓さんは複数の選択肢をお持ちと思いますが、ストレスや後悔がないことはもちろん、ご自身の気持ちに正直に、楓さんが楓さんらしくいられる選択をしてもらえたらいいと思いました。


写真/Shutterstock
取材・構成・文/山本理沙
 

 

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