「出たがる女はあざとい」画面を見るたび脳内に現れる幽霊に嫌悪させられる本当の理由


それは、どこの職場にもある女性の姿です。職場で、自治会で、PTAで、親戚の集まりで、ときに家庭の中でも、年齢に関わらず女性は“女子アナ”役を求められます。エラい人(たいていは男性)を気持ちよく喋らせるお相手役、お化粧しておしゃれしてニコニコと場を華やげる役、バカなふりをしたりトボけたことを言ったりして場を和ませる役。難しい話や偉い人の演説には口を挟まず、見た目や年齢について無礼なことを言われても、愛嬌ある態度を崩さない。失礼な! と思った女性もいるかもしれませんね。あんな嫌な女たちと一緒にしないでほしいと。

写真:Shutterstock

その“あんな嫌な女たち”こそ、あなたの脳に棲みついた幽霊です。女子アナの幽霊を頭に住まわせていると、作り出された女性嫌悪に無意識に加担することになってしまいます。幽霊話をしつこく語り続けているのは誰なのか、それを鵜呑みにして広めているのは誰なのか、正体を明らかにすれば、女性蔑視を強化する巧妙な仕掛けが見えてきます。多くの人の脳の中に女性嫌悪を囁き続ける女子アナの幽霊が生き続けている限り、たとえゴシップ記事がなくなったとしても「出たがる女はあざとい」「女は女を武器にして金持ち男と結婚したがるもの」などの偏見はこの世からなくなりません。
 

 


画面の中で上手に立ち回る女性アナを見るとイライラしたり、しんどくなったりすることがあるのは、もしかしたら自分もそのように振る舞った経験があるからかも。あるいはそのように振る舞う女性が評価される職場の風土に、嫌気がさしたことがあるからかもしれません。

しかも画面の中の女性アナは、茶碗洗いや祭りの料理作りや法事の後片付けや配布資料の無限印刷などの絵にならない重労働をしていません。カメラの前で自己顕示しているだけの、いいとこ取りの女に見えます。だからつい「やっぱあざといわ」などと言いたくなる。


でも、画面に映らない場所では茶碗を洗ったり、お茶出しをさせられている女性アナもいるはずです。セクハラやパワハラを受けても抵抗できない弱い立場で働いている人もいます。そのような立場は、収入面でも恵まれているわけではありません。