それってどうなんですか? と話し合える空気になった


ーーリアルタイムでこういう意見がありましたと紹介するのは、すごく誠実ですよね。視聴者からすると、意見って届くのかなって半信半疑だと思うんです。制作側が見てくれているし、アップデートしようとしているというのはすごく希望に感じます。

望月:あさイチではそれを一番大事にしていて、視聴者が声を寄せてくれるのは本当にありがたいです。

ーー他にも、気づいたバイアスはありますか?

望月:画面にご夫婦が映る場面で、お名前を字幕スーパーで出すときに、例えばアスパラ農家・山田太郎さん、妻・花子さんみたいに表示しますよね。横書きの文字なので、左側に男性、つまり夫がいれば、文字数を少なくできるという意味でそのように表示する場合もあるかもしれません。でも、女性だけ名字を省略して妻・花子さんとするのはどうなんですか、従属的なニュアンスがあるんじゃないですかと、チームの30代の女性スタッフから言われました。僕はこれまであんまり意識もしていなくて、確かにそうだなと気づかされました。そういったことを指摘し合える空気ができていると感じます。
 

 


社会構造がテレビにも反映されてしまっている


望月:例えば、物価高で家計が大変だから、給食の技に学ぶという企画がありました。そこで取り上げた方を見てみると、女性の方が多いということが見えてきました。番組として意図していなくても、こういう職業をするのは女性だよね、みたいなメッセージになってしまわないかということを話し合いました。

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現実問題として、栄養教諭という、給食の献立などバランスを考える教職員の方は男性が少ないので、探そうとすると大変ではあるんです。担当ディレクターが、男性でもそういう立場で仕事をしている人もいるし、優れたアイディアを持っている人がいるっていうことを紹介したり盛り込んだりしたいということだったので、多少時間がかかるかもしれないけど、それはぜひやってみたら、という話し合いが出来ました。

――全体的な男女比は偏っていなくても、分野によって偏りがあることに気づいたんですね。

望月:特に専門家の先生たちに関しては、分野によってはまだまだ、テレビの出演歴が多い方は男性が多い傾向にあります。それは、日本社会の中で、今現在強い立場にいらっしゃる方は男性が多いという現実があるからではないでしょうか。それが能力によるものというより、社会構造の中で、男性に偏るという側面があるのだと思います。

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