「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップする連載。
今回は、経済評論家であり『お金持ちの教科書』でお馴染みの加谷珪一さんの「キャッシュレス社会」についての記事をお届けします。

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先進国の中では突出した現金主義と言われる日本の決済環境が大きく変わろうとしている。Suicaや楽天Edyといった既存の電子マネーに加え、LINEやアップルなど、ITの本命企業がスマホ・ベースの決済サービスを相次いで導入しているからだ。一連のサービスが普及すれば、ガラパゴスと呼ばれた市場環境が一変するかもしれない。
 

登録者数は3000万人を突破


日銀は5月31日、2016年度における電子マネーの決済金額が5兆円を突破したことを明らかにした。5年前の2011年度は約2兆円だったことを考えるとかなりの急成長といえる。また1件あたりの決済金額も878円から991円と上昇しているので、利用者がより積極的に買い物に利用している状況が想像される。

電子マネーによる決済金額が増えているのは、Suicaや楽天Edyといった既存の電子マネーが社会に浸透してきたことが主な要因だが、これに拍車をかけることになりそうなのが、LINE Pay(ラインペイ)やApple Pay(アップルペイ)など、IT企業による新サービスの投入である。

ラインペイは2014年12月からサービスをスタートしており、今年の5月には登録ユーザー数が3000万人を突破した。アップルペイも2016年10月から日本国内でサービスを開始しており、今年から本格的に利用者が増える見込みである。

ラインペイの登録者数が3000万人を突破したといっても、キャンペーンなどでとりあえず登録したという人も多く、現段階では、決済インフラとして完全に定着しているとは言いがたい。

しかしながら、LINEの月間利用者数(MAU)は6800万人に達しており、日本人のほぼ全員が日常的に利用しているといっても過言ではない状況となっている。この巨大なプラットフォームが持つ潜在力を考えると、ラインペイが決済サービスの主役に躍り出る可能性は高いだろう。

 

ご存じない人のために仕組みを説明すると、ラインペイは登録したアカウントにお金をチャージして利用する。チャージの方法にはいくつかあり、銀行口座を連携させたり、コンビニ店頭での支払いや振り込みなど数種類から選択できる(ただしクレジットカードからの課金はできない)。

アカウントにお金をチャージすれば、その後はLINE内でのサービス課金に利用したり、他人に送金することなどができる(すべてのサービスを利用するためには本人確認が必要)。

またネット通販などでラインペイの支払いに対応している場合には、その決済にも利用することが可能だ。