今、不妊治療をしている。
年齢的にギリギリな上に、結婚早々患った病気のため、かなり出遅れスタートとなった。

今まで、自分は、比較的健康な方だと思っていた。大きな病気もなく、風邪などの小さな病気もほとんどせず、ちょっと体調がすぐれないな、と感じれば、食べて寝ることで、大体は回復していて、薬を飲むことなど、ほとんどなかった。むしろ、薬に頼ることを好まず、避けてきたような気がする。

その自分の健康への過信が、病気と共に、ガラガラと崩されてしまっても、なお、婦人科系の問題が全くなかった私は、不妊治療も、どこか他人事だった。

すぐにできるだろうと始めたものの、なかなかうまくいかない。もう、そちらの方の自信もなくなって、今は、薬漬けの毎日。
「栄養は、食物から摂るべき!」と、あんなにバカにしていたサプリメントも、毎朝、数種類を飲まないと、落ち着かなくなるようになった。


そんな自分へのささやかな抵抗として、薬を好きな木箱に隠して、机の上に堂々と置いている。
毎朝、木箱を開けて、薬を一つ一つ、お気に入りの小さな器に出して。
水用のグラスも最近新調した。
そうすると、毎朝のルーティーンがちょっと楽しみになった。
何気なく日々手にするものに、人の手の温もりを感じることが、やっぱり落ち着く。

あ〜、だから、機械的に栄養が身体に入ればいい、という発想のサプリメントは嫌いなのだな、と感じつつ、いつまで続くかわからない、サプリメントのループに、まんまとはまっている自分が、やっぱりときどき嫌になる。



「赤ちゃんを迎えるために、
  ◯規則正しい生活をしましょう。
  ◯バランスのとれた食事をこころがけましょう。
  ◯質の良い睡眠をこころがけましょう。」
上記と並列して、必ずと言っていいほど言われるのが、
 「◯何事も前向きに。
  ◯ストレスを溜めない。」
確かに、ネガティブ思考の私ができていないこと。
実践的な改善は、分かりやすく、実行しやすいが、
こういう精神的な面こそ、大切なのかもしれないな、と最近気がつく。
 

◯今日の薬箱・・・佃眞吾の刳りもの、富井貴志の「牛酪箱」
◯今日の薬皿・・・安齋新・厚子の茶杯
◯今日の薬コップ・・・大迫友紀のカットガラス

 

撮影/白石和弘