ここ2、3年のことかしら・・・。古道具屋さんなどで、「御深井焼」という文字を意識してみるようになった。「おふかいやき?みふかいやき??」適当な読みを頭に思い浮かべながら、端正な形に、細かい貫入の入った様子がきれいだな、と気になりつつ、ずっと買わずにいたが、今年初めて、我が家にやってきた「おふけやき」!和菓子をのせる器を探していたときに、試しに買ってみたら、でしゃばらず、綺麗すぎず、野暮ったすぎず、上品にお菓子を受け止めるのである。お菓子ばかりでない。ぬか漬けもいい。時雨もいい。お刺身なんかもいい。遅ればせながら、すっかり「おふけやき」の魅力に、ハマってしまったのである。

そうして、ふと、このなんともいえぬ“いい”貫入は、使っていくうちに入っていったもので、御深井焼の新品はどういうものだったのだろう?新品でも“いい”と思えるのだろうか?という、あらぬ疑問が湧いてきていたその矢先、安洞雅彦さんという美濃の陶芸家が、柳町にあるギャラリーで、美濃おふけ展をやると見つけた。
もうすっかりご無沙汰しているギャラリーですし、失礼ながら、安洞雅彦さんという陶芸家も存じ上げなかった。ただ、まっさらな御深井焼を見たくて、展示会に足を運んだのである。

もともと織部焼をメインに作陶していらっしゃる陶芸家で、山へ入って、陶片を見つけ、その断面から、素地の作り方や釉薬や絵付を研究し、作品にいかしている。大事そうに、風呂敷に包まれた桐箱から、沢山の陶片を取り出して説明くださった安洞さんは、かなりロックな“変”(褒め言葉として)人だった。
そして、作るものが「これは古いもの?」と見間違うほど圧倒的。ただ古いものの“うまい”模倣のようないらやしさもなく、作家が陥りがちなオレオレ感もない。
ただ、織部の作家らしく、どの作品にも、小さな三つ足が付いていて、ちょっと料理屋っぽい。「家で日常的に使う器としてはどうなのかな?」と思いつつ、真新しい御深井焼を使いたくなり、お得意!?の6客買いをした。

そうして、家で使ってみると、今風の器にも、古いものにもすんなりと合う。多少の形の奇抜さも、灰釉のかもし出す色味の柔らかさのせいか、むしろ、“丸”“◯”“マル”と単調になりがちな器の並びをうまく乱してくれる。
懸念していた三つ足も、使えば、全く気にならない。通常の器の丸い高台が小さなポッチになっただけ。むしろ、少し上がっていることで、器を手に取りやすい。

忘れちゃいけない、貫入のこと。
展示会場に置いてあるときから、そっと耳を澄ますと、「ピキン、ピキン」とヒビの入る音がするのである。家で使っていても、洗うと、ヒビからじわりと水が染み込む。手のかかると言えばそうかもしれないが、存分そだて甲斐がある。

キラッと光る原石を見つけたプロデューサーのように、今からその成長が楽しみでならない。

◯今日の器・・・安洞雅彦の御深井焼

 

撮影/白石和弘