雲南省はお茶で有名な土地柄ですが、きのこのことも決して忘れてはいけません。ここで言うのは乾燥や人口栽培のものではなく野生のきのこのこと、シーズンは6月に始まり7月が最盛期、種類や量は変わるものの10月の終わりまで、比較的長い間新鮮なきのこが楽しめます。このきのこを使った鍋料理は地元っ子たちにもたいへん親しみがあり、シーズンのはじまりには町の人々の多くが鍋店に駆けつけるそうです。そのくらいにこの「きのこフィーバー」は人々の心を弾ませ、熱気を孕んで繰り広げられます。

 

まずはきのこが売られているところに行ってみよう、旅友の意見が一致し、きのこ市場に出かけました。きのこ好きとしては、きのこで有名なこの町で、どんなきのこがどんなふうに売られているのか、とても気になります。

世界最大とも言われるきのこ市場は、町の中心部にあります。メインの会場に入る前の場外の路地で、すでに興奮は高まります。山に住む人々が摘んできた美しいきのこがたくさん並んでいるではないですか。私の訪れた秋の時期は松茸が豊富なようで、どちらからも「ソンロン(マツタケ)!」と叫ぶ威勢の良い声が聞こえてきます。

 

場外を過ぎて中に入ると、、、凄い!広い会場に所狭しと様々な種類のきのこが並び、それを商う店主と買い物に来た人たちが真剣に掛け合っています。驚くのはそこに並んだきのこ達のとても美しいこと。色も赤、黄色、オレンジ、紫、緑、黒、白、青みを帯びたものまで、本当に見たことのないものばかりです。形はといえば、もう本当に一言ではいえない豊富さで、典型的なイメージのかさ、じく、いしづきがあるものから、杭のように大きく長いもの、まん丸で風船のようなもの、珊瑚のように細かく広がっているものなどなど、一つひとつあげるときりがないほど。日本でもきのこはとても美味しいし、たくさんの種類があると思っていましたが、さすが山の多い雲南省、初めて見るものの多さにまず大興奮です。乾物になったきのこもたくさん売られていて、ここに来ればおおよそ高級なものから手頃なものまで、きのこは大抵揃うといってよいでしょう。

新鮮で美しいきのこたちを見たら、もう食べずにはいられません。早速その昼、きのこ鍋屋さんが軒を連ねる「きのこ鍋ストリート」に足を運んで、食べてみることにしました。

 

店内に入ると、先ずはショウケースに並べられたきのこをチェック。どのきのこを鍋に入れるか、お店の人と相談しながら決めます。スープのベースは店によって色々ですが、私が何軒か行ったところ、大抵の店で数種類の中から選べるようです。地鶏、アヒル、スペアリブ、スッポンのラインナップから、オススメよと言われたアヒルをチョイス。まずはなみなみと土鍋に注がれたスープと種類ごとに綺麗にカットされたきのこが運ばれてきます。極端に火の通りの早いきぬがさだけ以外は、スープが沸いた鍋に一気に放り込まれます。「おいしくなるまで15分ほどかかります、それまでは食べてはダメよ」そう言われて、魅惑的な香りを漂わせグラグラと煮える鍋を目の前にしばしおあずけ、我慢の時間が流れます。

 

鍋を扱うのはお店の人、アクを取ったり食べごろを見極めてくれます。お店の人が一人ずつ、小さなお椀にたっぷりのきのことスープをよそってくれて「さあ、召し上がれ」。やっとこの愛おしいきのこ様にありつけます。

 

まずはスープをすすります。なんと優しく旨味の溢れる味でしょう。疲れが一気に飛んでいくようです。塩分も控えめで、これならいくらでも食べられます。そして何種類ものきのこを一切れずつ、味わいを確かめながら噛みしめます。サクサク、ツルツル、ジュワーッ…食感、味、香り、それぞれが、あれだけ煮込んだにも関わらずちゃんと個性を見せてきます。はぁ…きのことはなんと素晴らしい食材なのでしょう。

存在の不思議さといい、味の良さといい、全く奇妙で美しくて面白い!きのこたちよ、この世に存在してくれてありがとう。うっとりと夢中で鍋を食しながらきのこたちの住む山を思ったのでした。

\雲南省はこんなところ/

 

面積 394,100㎢
人口 3885万人
言語 北京語が主
民族 中国で少数民族の数が最も多い(漢族、イ族、ペー族、ナシ族、ハニ族、タイ族など26民族)


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