毎朝のもずくの散歩では、小一時間ぶらぶらとご近所を歩くのだが、その道中の楽しみは、お気に入りの家を見つけること。新宿が出来る前は宿場町だったというこの町には、昔からのおうちも多いようで、思わぬ邸宅を見つけたり、いかにも古い木を庭に携えて、その木に遠慮しながら建て替えられたような家の建築が面白かったり、相続の関係か、管理しきれない大きな土地の半分に、母屋とお揃いのアパートをたてているおうちなど、時代の経過や生活の息遣いが見え隠れする、いい町だなと感じる。

私たちが「吉田香取さんち」と呼んでいる一番のお気に入りの家は、四角い土地に対し対角線状に母屋が建てられた大胆な建築で、一階部分は大きくピロティーになっていて、その奥には、手入れの行き届いたちょっとした日本庭園が見える。もずくの散歩をしながら、今日の「吉田香取さんち」について夫と語り合うのが日課。「窓一面の障子がいいよね~」「低い椿の木がいいよね~」と私たちは、お目にかかったこともない「吉田香取」さんの大ファンである。

ファンである理由がもう一つある。可燃ゴミの日に家の前に捨てられているゴミが見事なのである。半透明のゴミ袋の内側に、新聞紙を敷き詰めて、中身が見えないようになっていて、決まって2袋、すっくりと佇んでいる様子は、まるで紳士と淑女。私は、それを「エレガントゴミ捨て」と命名して、早速我が家でも実践するようにしている。

それまでは、紙袋を利用していたのだが、日によって、いいサイズの紙袋がなかったりすると困ったものだった。また、毎日どんどん溜まっていく新聞紙を適宜ゴミ袋として消費できるのは、一石二鳥である。そして、なんといっても、見た目がエレガント!ごみ回収のおじさんにとっても、通行人にとっても、自分にとっても、気持ちがよい。(カラスにとっては、大迷惑?)

「ゴミは中身が見えないとダメでしょ」と意地悪を言う方もいるかもしれない。ですが、こんなにエレガントにゴミを捨てる人に、ゴミの分別ができない人はいないでしょうし、回収してくれなかったこともない。

すっかり新聞紙使いにハマってしまった私は、流しの脇の小さな生ゴミ入れも、新聞紙で作るようになった。昔、祖母が作っていたような気もするが、その時は、なんだか貧乏くさくて嫌だったことを記憶している。ですが、主婦になって、毎日真面目に生活するほど、なぜかゴミが沢山出る。特に生ゴミは厄介者。三角コーナーにネットや小さなビニール袋や…色々試してみたけれど、どれも帯に短し襷に長し、な印象。新聞紙袋は、適宜水分を吸収してくれるし、魚の骨などの固く鋭いものも包み込んでくれる。そして、一日の生ゴミは、新聞紙袋と共に、新聞紙を敷き詰めたゴミ袋の中へ。バックinバックならぬ、新聞紙in新聞紙。そうすれば、不思議と臭いもしないのである。

エレガントとはどういうことだろうか。
エレガントには、色々な意味で、ある程度の”余裕”は必要であると思う。
そして、その”余裕”をどのように使うのか。
自分のことばかりでなく、
人のことに思いを馳せる”余裕”こそ、エレガントではないかと思う。

「吉田香取さんち」のゴミ捨てから学んだ、エレガントのススメ。

 

○今日のエレガント生ゴミ袋・・・新聞紙とチラシで作った自家製新聞紙袋

◯今日の写真は・・・
クリスマスでお役目を終えた針葉樹の枝があったら、それを大きな鉢に入れて、沸かしたてのお湯を注いでみて。温かい湯気とともに、樹脂の香りがふぁっと部屋中に立ち込めて、浄化されるようです。

写真:白石和弘