「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップしていきます。

※この記事は、2019年5月23日に「現代ビジネス」にて公開された記事を転載したものです。

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先日、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社による、「30代・40代の金銭感覚についての意識調査 2019」が発表され、約2割の人が貯蓄できていないなどといった結果が話題となりました。実際、「みんなどれくらい貯めているのか」「どのくらい貯めたら安心できるのか」というのは、普遍的に多くの方が関心を持っているテーマです。
今回、『ほったらかしでもなぜか貯まる!』などの著書があるファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが、「一体どのくらいの貯蓄をすれば、生涯安心して暮らせるのか」、いくつかの目安や目標とともに紹介してくれました。

国民の三割が、金融資産ゼロである


冒頭のSMBCコンシューマーファイナンスの調査結果で、約2割の人が貯蓄できていないということに驚かれた方も多いようですが、実は類する調査結果は、以前から色々なところから出ています。

例えば、金融広報中央委員会が運営しているサイト「知るぽると」が2016年に調査した結果を見てみましょう。国民の金融資産(預貯金のほか、株式や投資信託などの金融商品)の有無について調べた内容があります。

金融広報中央委員会「知るぽると」より(https://www.shiruporuto.jp/public/data/life/stat/stat002.html


この表を見ると、国民のうち、全体の三割が金融資産を持っていないという結果になっています。

年代別に見てみると、やはり20代では資産形成は難しいようで、金融資産の非保有世帯は45%程度となっていますが、それ以外の世代では、平均してやはり三割程度の世帯が、金融資産を持っていないという内訳になっています。

 

約1000万円の貯蓄が普通!?


ここで一つ気になるデータがあります。

金融試算を保有していない人の割合が三割にのぼる一方で、一世帯あたりの金融資産保有額の平均は1078万円と、一千万円を超えているという数値です。

世代別に見てみると、同じく平均だと30代で約400万円、40代で約600万円、60代では、約1500万円の金融資産があるという結果になっています。

この数字を見て、皆さんはどのような感想をお持ちになったでしょうか。

「自分はそんなに貯蓄できていない……」と不安になってしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。

実は、平均の貯蓄額のデータを見る際に陥りがちな落とし穴があります。

私たちがデータを見る際に、注目しがちなのは「平均の値」です。

ですが、平均値というものは、サンプルの中に突出して高い値が含まれている場合、上振れすることになります。

ですから、世代別に、どれくらいの額を貯蓄しているかを知るには、平均値と同時に、中央値についてもチェックしてみる必要があります。中央値とは、数字を小さい順などに並べ、真ん中にくる値のことを指します。体感的には平均に近いと感じる数字になることが多いかもしれませんね。

同データの中央値を確認してみると、30代で約170万円、40代で約200万円、60代では、約650万円となっています。

平均値に比べ、低めの金額が出ていることが分かります。平均値を見た際には、こんな金額は貯蓄できないと思った方も、中央値の金額なら目標にしやすいのではないでしょうか。

「人並み」の貯蓄をと目指す人であれば、まずは統計データの中央値、その次に平均値を貯蓄目標とするのもわかりやすい目安といえます。