「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップしていきます。

※この記事は、2019年3月7日に「現代ビジネス」にて公開された記事を転載したものです。

=====================

2019年10月の消費税引き上げを見越して、増税前の住宅購入を検討する人が増えています。しかし、購入を急ぐのは、本当に賢いお買い物でしょうか? 『ほったらかしでもなぜか貯まる!』などの著書があるファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが、消費税増税が住宅購入にどれくらい影響あるか、試算してくれました。


消費税は土地にはかからない


皆さんこんにちは。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢です。

いよいよ、10月には消費税の税率が8%から10%に引き上げられる見込みです。

2%の税率アップは、日々の買い物もそうですが、特に大きな金額の買い物に影響を与えそうにみえます。大きな買い物の筆頭と言えば、住宅のためか、増税前に住宅を購入するのがお得なのかどうか、尋ねられることが増えてきました。

適用される税率によって利用できる税制にも違いがあります。今回は、消費税増税が住宅購入に与える影響について、じっくりと考えてみたいと思います。

photo by istock
 

最初に確認しなければならないことは、消費税は土地の購入にはかからないということです。

一般的に一戸建ての住宅を購入するといった場合、土地+建物の価格をイメージすることが多いですが、消費税がかかるのは建物だけです。マンションも物件価格には建物部分と土地部分が含まれていますが、土地部分には消費税はかかりません。

また、個人からの購入も消費税はかからないため、戸建てやマンションを中古で検討している人も、思っているより消費税の影響は少ない可能性があります(不動産会社が売主の中古物件は建物部分に消費税がかかります)。


すまい給付金を活用しよう


次に、政府が増税による消費への影響を緩和するために準備している制度を確認してみましょう。

代表的な制度の一つとして「すまい給付金」が挙げられます。すまい給付金の受給額は、住宅購入時の消費税率や、購入者の年収によって変わります。

具体的には、消費税8%で物件を取得した場合、収入の目安510万円以下で、最大30万円のすまい給付金が受給できます。一方、消費税10%で物件を取得すると、収入の目安775万円以下で、最大50万円の給付金を受給できます。

モデルケースで考えてみましょう。扶養家族のいない年収400万円の人が単独名義で物件を取得した場合、消費税8%だと20万、消費税10%だと40万円と、受給できるすまい給付金の差は20万円です。

もう一つの例として、年収520万円の人の場合も考えてみましょう。扶養家族のいない年収520万円の人が単独名義で物件を取得すると、消費税8%だとすまい給付金は受け取れません。けれども、消費税10%の場合、30万円のすまい給付金が受給可能です。

消費税2%増税の影響は、建物価格1000万円あたり20万円です。

年収や取得する物件によっては、すまい給付金で消費税の増税分の多くがカバーされるような仕組みになっていることがわかります。