同世代の女優さんたちの挑戦や評価が
すぐに知れてしまうからこそ……

 

「4人は互いに化学反応しながら成長してゆく、そういう意味では私も周囲に多くのいい影響を受けているかなと思います。芸事の世界って、誰が何をしているかすぐわかってしまいます。同世代がどういう作品に出ているか、どういう挑戦をしているか。今の時代、SNSでもすぐ評価が上がってきますし。それを見て、素晴らしいなと思ったり、私も頑張ろうと思ったり。よく連絡しているのは、親友の伊藤沙莉(『寝ても覚めても』「全裸監督」)。最近は彼女がすごく忙しくて、私から頻繁に連絡しているんですけど(笑)、あの監督さんと一緒なんだよ、どんな感じの方?なんて、お互いに仕事の話をし合ったり。橋本愛(「いだてん~東京オリンピック噺」『ここは退屈迎えに来て』)もそういう友達です」

小松菜奈、三吉彩花、二階堂ふみ、川栄李奈、広瀬アリス……松岡さんの生まれ年である1995年前後は、実はいまの日本の映画界でひっぱりだこの、演技力と存在感を備えた女優たちが多い世代です。その中で生き抜く松岡さんを支えるのは、そうした仲の良い友達との関係。そしてそれぞれの作品の中で誰かからもらった、ほんの一言の言葉だったりするそうです。

「そういうことは毎回あります。今回は現場に足を運んでくださった恩田陸先生の言葉でした。映画終盤の演奏シーンの撮影の前で、衣装のドレス姿でドキドキしながら、控室でお待ちしていたんです。そうしたらドアを開けて私の姿を見た瞬間に“亜夜ちゃんだ!”って言って下さって。原作の先生から役の名前で呼んでもらう、それは死んでもいいと思うくらいの嬉しさで。その一言で報われました、今までの撮影でやってきたことは間違いじゃなかったと」

心配する両親からは「大学に行って」とずっと言われていたけれど、自分は女優になる以外は考えたことがなかった、と松岡さん。そのひたむきさは『蜜蜂と遠雷』の4人のコンテスタントの姿に、どこか重なります。

「ゆっくりであっても、出会いを大切にしながらまじめにやっていれば、食べていくくらいはできるだろうと。不安とか焦りとか、当時はぜんぜんなかった。そういうことは今のほうが考えますね。天才3人に対する高島明石の気持ちが、自分に一番近いかもしれません。彼のように養う対象がいるわけではないけれど、普通の生活者として、私は女優を続けていきたいなと思うんです」

 

女優 松岡茉優 1995年2月16日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作は映画『ちはやふる』3部作(16・18/小泉徳宏監督)、映画初主演を果たした『勝手にふるえてろ』(17/大九明子監督)、『blank13』(18/齊藤工監督)、第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『万引き家族』(18/是枝裕和監督)。第42回日本アカデミー賞では、優秀主演女優賞そして優秀助演女優賞を受賞した。待機作に映画『ひとよ』(11月8日公開/白石和彌監督)などがある。

<作品紹介>
映像化不可能と言われた傑作がついに映画化!!

『蜜蜂と遠雷』

©2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

史上初の快挙となる〈直木賞〉(第156回)と〈本屋大賞〉(2017年)のダブル受賞を果たし、現代を代表する作家の一人、恩田陸の新たな代表作となった「蜜蜂と遠雷」。 国際ピアノコンクールを舞台に、亜夜、明石、マサル、塵という世界を目指す若き4人のピアニストたちの挑戦、才能、運命、そして成長を描いた本作は、累計発行部数150万部を超え、いまだ読者を増やし続けている。文字から音が聴こえてくるとまで言われる圧倒的な音楽描写を伴うこの物語は、恩田曰く、「そもそも、この小説は絶対に小説でなければできないことをやろうと決心して書き始めたもの」であり、「映画化の話があった時は、なんという無謀な人たちだろうとほとんど内心あきれていた」ほど。

©2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
©2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

そんな映像化不可能と思われた原作の映画化に挑むのは、2017年『愚行録』で長編監督デビューを果たし、新藤兼人賞銀賞を受賞、今もっとも注目される新鋭・石川慶。そして、注目のキャスト陣は今を彩る豪華な“競演”が実現。 亜夜役として、近年精力的に映画出演を果たし、第42回日本アカデミー賞において、『勝手にふるえてろ』で優秀主演女優賞、『万引き家族』で優秀助演女優賞を受賞するなど、今最も輝く女優の一人となった松岡茉優が主演を務める。

10月4日(金)全国公開 配給:東宝
原作:恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)
監督・脚本・編集:石川慶
出演:松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン
鈴鹿央士(新人) 臼田あさ美 ブルゾンちえみ 福島リラ / 眞島秀和 片桐はいり 光石 研 平田 満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史
「春と修羅」作曲:藤倉大
ピアノ演奏:河村尚子 福間洸太朗 金子三勇士 藤田真央
オーケストラ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団(指揮:円光寺雅彦)
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

撮影/塚田亮平
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵
 
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