円広志さんが歌っていた『夢想花』ではないですが、「長く生きていると忘れてしまいたいことがどんどん増えてくるな」と思っている、いや思っていた編集部・大森です。

落ち着かない日々が一段落し、久しぶりに、平日夜の映画館に滑り込んできました。選んだ作品は『アリスのままで』。主演のジュリアン・ムーアが悲願のオスカーを手にした作品です(5度目のノミネートで初受賞)。

私は、夜のひとり映画LOVERです。次は『マッドマックス』を4DXで観たい!

若年性アルツハイマーを扱った作品で、難病を発症した主人公の葛藤を軸にし、家族の戸惑い、絆を描きながら物語は進みます。必要以上にドラマティックにせず(予告動画を見るとそう見えないかもしれませんが!)、主人公たちの過ぎ行く日常が淡々と描かれているために、「自分だったらどうする?」「家族におこったらどうする?」と自分自身に問いかける1時間41分になりました。ちなみに、監督のリチャード・グラツァーは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の合併症により、アカデミー授賞式の約3週間に死去。この映画の企画を立ち上げた年にALSと診断され、(主人公のアリスとはある意味逆の症状で)撮影を敢行。撮影を1日も休むことはなく、右足の親指でiPadを叩くことでコミュニケーションをしていたとか。アリスに自分の思いを、よりいっそう重ね合わせて撮影を進めていったのではないでしょうか。

どんなに忘れたいと思っている記憶も、素晴らしい思い出と同様、現在の自分を形成している宝物である――そんなことを思いながら、映画館を後にしました。

 

不粋な備忘録
□ジュリアン・ムーアの抑制の利いた演技は、確かに素晴らしすぎる。
□『トワイライト』のクリステン・スチュワートが大人になって、可愛くなりすぎていて悶絶。
□ジュリアンが指名したという、妻の病状(変化)に対応しきれなくなっていく夫役のアレック・ヴォールドウィンがかなりのアタリ役。
……つまり、キャスティングが最高です!