横石 僕、まさにそれですね。もともと自己紹介が苦手で、それを克服するために書いた本のおかげで“その道のプロ”みたいに言ってもらっているので……。いわゆる謙遜とも違うんですよね?

田中 インポスター症候群は、自分をありのままで捉えられていない状態。冷静に理解したうえで、あえてへりくだった表現をするのとはちょっと違いますね。今日は「こんな風に思ってしまう人はインポスター症候群かも?」というチェックシートを用意してきました。

・これまでやってきたことは私の力ではない
・運が良かっただけ、まわりに恵まれただけ
・まわりが私を過大評価してくれている

横石 今聞いていても、これを思わない人がはたしているのか?と思っちゃいます(笑)。

佐藤 具体的な言葉で聞くと、「私もそうかも」って思いますね。インポスター症候群の兆候があると、どういう悪影響があるんでしょうか。またどうマインドセットすれば、自分を詐欺師みたいだなんて思わずに、つらくならずに済むんでしょうか。

 



「役割をまっとうする」ことで克服できることも


田中 問題は2つあって、「①頑張らないこと」と「②頑張りすぎてしまうこと」です。①は「チャレンジしないこと」に言い換えてもいいかも。例えば会社の上司に「昇格して管理職にならないか」と打診されても、自信が持てない状態なので「私なんかとてもそんな実力ない」と、せっかくのチャンスを断ってしまうことがある。②はそのままですね、自信がないゆえに、もっとやらなきゃ認めてもらえない、今の量じゃ足りないと頑張って、結果的に自分を追い込んだりバーンアウトに繋がってしまうことがあります。解決策は、やはり自分自身を正しく認識すること。その自分を受け入れることが大事です。

 

佐藤 横石さんはさきほど「自分もまさにこれ」と言ってましたけど、自己開示のために何か、トレーニングなどはされたんですか?

横石 いや、それこそこのイベントのお誘いを受けた時も「え、なんで僕?」って思ったくらいなんで(笑)。ただ最近はイベントに登壇するのも、「自分の役割」としてこなしている感覚はありますね。本来の自分は少し脇に置いておいて、そういうポジションを演じる、というか。誰でも、人格って一つじゃないと思うんです。そういう側面をしっかり捉えようとしてきた成果かもしれませんね。

佐藤 場面場面で求められる役割をこなすこと、そして自分はどんなカードを持ってるのかを把握することが大事なんですね。

田中 自分自身で気付くこともそうですが、でも人って、自分では気付けないこともある。だから人に指摘してもらったり、周囲との会話や対話を通じて気付くことも大事だと思います。自分軸と他人軸の両方から掘り下げていけるといいですよね。

 

謙遜こそ美徳、という文化を持つ私たち日本人にとっては、「正しい自己評価」は想像以上に難しい作業。意識的に自己肯定感を高めていくことが必要なのかもしれませんね。

後編では、自分を知るためにはもちろん、キャリアの棚卸しにも有効な「キャリアのタグ」ワークショップの様子をレポートします! どうぞお楽しみに。

文/山崎恵
 
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