自分がアガらないことは
全部捨てていい!

コロナ禍で変わる化粧をする意味「何のため、誰のための美容?」_img0
 

とはいえ、急に“美容における自由”を与えられると、それはそれでどうしていいか分からない、という人も多いかもしれません。その結果、何もする気がせずすっぴんで放置、という日々が続くことも……。

 

「今、『誰にも会わないから美容をする意味がない』とか、『面倒だからいいや』と思っている人にとっては、もともとやらなくていいものだった、ということだと思うんです。同時に、やめてみた結果、『何か物足りないな』と感じたり、逆にたまにメイクしたときに気持ちが明るくなった、ということもきっとありますよね? そういう、自分の中で自然とこみあげてくるものだけ大事にしたらいいんじゃないでしょうか。人の目が無ければ張り合いがないなら、人の目がある時だけ楽しめばいいわけだし。このコロナ禍で、いちいち自分の気持ちを確認しているどころじゃないという人もたくさんいらっしゃると思うのですが、そこで焦りや、『何もしていない』という劣等感を覚える必要も全くないと思っていて。美容は逃げたりしないし、欲しくなったらいつでもすぐに手が届くところで待っていてくれます。気楽に気ままに、適当でいいんです」

そんなふうに、美容の価値観が変わり始めるであろうこれから。長田さんが注目している、新たな“筋トレとしての美容”は何なのかも聞いてみました。

「美容というと顔面の話だと思われがちですが、今の時期はぜひ身体に意識を向けてほしいですね。普段は人に強制をしない主義なのですが、運動については”マスト”と言いたい。ステイホーム生活が続くと、運動不足で体のあちこちがゴワゴワのガチガチに。心は体の状態に引っ張られることもあるから、自分にあった運動や緊張をほぐすマッサージやストレッチを取り入れて、たくさん深呼吸をして緩められるといいですよね。私は最近、朝6時半に起きてラジオ体操をし始めたんですよ。子供の頃はなんの負荷も感じずにやっていたラジオ体操ですが、今本気でやるとけっこうキツいし、『おはよーございます!』ときびきびと威勢のいいかけ声に促されて、テンションも上がる。YouTubeで流行しているHandClapダンスや、NIKEのトレーニングアプリも楽しいですよ。いろいろ試してみて、楽しく続けられるもの、気持ちがシャンとするものを取り入れてみてください。ちなみに、運動不足で太ったという悩みも増えていますが、あんまり気にしなくていいんじゃないかなと思います。逆にこれまでが痩せすぎだったんじゃない?ぐらいに、ど〜んと構えて、自分にダメ出しをしないでリラックスして過ごしましょう」


美の正解がなくなり
“人として”が問われるように

 

コロナ禍によって始まった変化は、美のスタンダードも急速に変えていくのではないか、と長田さんは予測しています。

「ちょっと政治の話になっちゃうんですけど。コロナも辛いけど、弱者に目を向けず、中身が伴わないリーダーシップ茶番劇の巻き添えをくう虚しさもかなりこたえていて。そんな中で、海外の女性リーダーの活躍をまぶしく眺めているんです。美容という観点から言えば、庇護欲を誘うような顔の方が生きやすいから“困り顔メイク”が流行ったりしていたけど、これからはもっと“頼りがいがある”顔、人の痛みにも目を向けて庇って引っ張る力量を感じさせるような顔が魅力的に見えてくるのではないかという予感もあります。力のある誰かに選ばれて守ってもらって愛でられる用の顔っていう方向は、もう目指さなくていいと思うんです。小手先の顔の造作どうこうというものを超えた、人として度量がもっと問われるようになってくる」

そうなると、その分「これをやっておけば正解」というものがなくなってくるのも事実。自分はどういう人間なのか、しっかり向き合わざるを得なくなってくるでしょう。

「美の正解がないと不安に感じる人は、自分を探る必要があると思います。自分はどうあると心地よくてリラックスできているのか、何を恐れて何に幸せを感じるかなど。これからどんな風に世界や価値観が変わるとしても、自分と向き合って探った経験が軸となって、きっと皆さんを助けてくれるはずです」

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『美容は自尊心の筋トレ』

発行:Pヴァイン 発売:日販アイ・ビー・エス ¥1480(税別)

「みんな違ってみんな美しい」をモットーに、ライターの長田杏奈さんが綴った異色の美容エッセイ。「全員美人原理主義 この世に「ブス」なんていない」、「自虐は自分も人も傷つける、諸刃の剣」、「母で妻で、それで? 役割スタンプラリーからの卒業」など、美の呪いから解き放ってくれる話が満載です!

取材・文/山本奈緒子
この記事は2020年5月15日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。
 
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