「コロナ禍で今後の経済はどうなるか?」明快で誰でも分かるプロの答え【ウェルスナビ・柴山和久さん】#コロナとどう暮らす_img0
 

コロナ禍により大企業の倒産、経営悪化、賃金・ボーナスカット、働き先がないなどといったニュースを耳にすることが多くなりました。「先行き不透明ななか、今後の経済や私たちのお金はどうなっていくのだろう」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか? そこで今回、お話を伺ったのが、日本で最も大きな規模のロボアドバイザーによる投資サービスを運営している「ウェルスナビ」代表の柴山和久さん。今後の経済やお金についてのお話をマネーコラムニストの西山美紀と編集部の片岡がオンラインで伺いました。

<今回お話を伺ったのは……>

「コロナ禍で今後の経済はどうなるか?」明快で誰でも分かるプロの答え【ウェルスナビ・柴山和久さん】#コロナとどう暮らす_img1
 

柴山和久さん
「ウェルスナビ」代表取締役CEO。9年間、日英の財務省で、予算・税制・金融・国際交渉に従事。2010年より5年間、マッキンゼーにおいて主に日本の金融プロジェクトに従事し、ウォール街に本拠を置く資産規模10兆円の機関投資家を1年半サポートした。2015年に起業し現職。2016年、世界水準の資産運用を自動化した「ウェルスナビ」をリリース。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。

 

――大企業の倒産、業績の悪化などを耳にして、「コロナにより、経済はどうなってしまうんだろう……」と不安が高まっています。柴山さんはどのように感じていますか?

柴山和久さん(以下敬称略):今回のコロナ禍はウイルスが原因ですので、新型コロナウイルスについてもっと多くのことがわかってくれば経済が戻る見通しは立つと思っています。今はまだワクチンがなく、いろいろな治療薬を試している段階です。私たちの健康に与える影響についても、まだよくわからないことが多すぎますよね。そのため、経済に影響があるという状況です。
 
健康が最優先で、その次に経済をどうしたらよいかという順で世の中が動くため、1ヶ月、半年といった短期的には経済の見通しは立てづらいのです。
 

――長期的に考えれば、経済は上向くでしょうか。

柴山:はい、人類は今回のコロナウイルスが初めてではなく、過去には天然痘やはしかなど、さまざまな感染症を乗り越えてきた歴史があります。数年前の新型インフルエンザも、今は季節性インフルエンザと同じような扱いで、危機的状況ではなくなっていますよね。今回の新型コロナもいつか乗り越えて、経済は成長し続けるだろうと思います。
 
今回のコロナ問題は、アジア地域でポリオを撲滅した責任者の方が、日本の専門家会議のリーダーを務めていらっしゃるという点も、非常に恵まれていると私は感じます。「3密」(密閉、密集、密接の3つの重なり)も最近は海外のメディアでも取り上げられていて、誇らしく思います。

とはいっても、新しい危機に直面した際には、どれくらいのインパクトがあるかは専門家にもわかりません。もしわかっていたら、そもそも危機にはならないですから。
 

――今回は「外出自粛」という国民一人ひとりの暮らしに直接影響があり、より不安感が増しました。

柴山:そうですね、リーマンショックなど過去の大きな危機とは2つの違いがあると思っています。
 
一つは経済危機である以前に、「健康危機」であること。世界中の人がリスクにさらされています。日本でも海外でも有名なタレントやスポーツ選手、政治家が感染するなど、お金があるかないか、地位があるかないかなど関係なく、全員がリスクにさらされている。そのため、不安をより感じやすいと思います。
 
もう一つが、心の準備をする期間があまりにもなかったこと。飲食店やイベント会社、旅行会社、航空会社など、売り上げが激減したり、一時的になくなったりしてしまいました。緊急事態宣言を受けて、企業規模に関係なく、突然大きな影響を受けたのです。そのような事態に備えて準備する期間が、あまりにもなかった。
 
ある日突然危機がやってきて、それが長く続いている。今回のショックは本当に残酷だと感じ、心を痛めています。


――また、今回の経済危機をリーマンショックと比較して、そのときよりも危機的な状況だという専門家や企業家の方も多くいます。リーマンショックでも賃金カット、ボーナスカット、雇用にも影響がありましたが、今回はもっと打撃が大きいのでしょうか?それはどの程度か予測はできますか? 

柴山:リーマンショックとはまったく状況が違うので、単純に比べることはできません。確かにアメリカでの失業率は、リーマンショックのときの水準を上回っています。ただ、リーマンショックの時には、多くのアメリカ人が解雇されたのに対して、今回はコロナショックが落ち着けば元の職場に戻る前提の「一時的な解雇」が9割を占めています。

この違いはどこからくるのでしょうか。リーマンショックの時にはアメリカで住宅バブルが起きていて、経済が傷ついていたのに対して、今回のコロナショックでは経済自体はまだ大きく傷ついていません。極端な話、全人類が家に2週間籠もったら、新型コロナウイルスは地球上からほぼ消滅し、何事もなかったかのように経済は元に戻るでしょう。

とはいえ、そんなわけにもいきません。経済活動を縮小したままだと、企業倒産が増え、本当に経済が痛みだします。舵取りがとても難しく、日本だけでなく各国とも試行錯誤しています。

 
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