「ロスチャイルド家の上流マナーブック」という本を読んだのは、ずいぶん前のことですが、その中で心に残っている文章があります。それは、大切なお客様にしないことは、自分自身に対してもしない、ということです。お客様に欠けたティーカップでお茶を出さないように、自分にもいちばんよい器をーー自分を大切にするということは、そういうことなのだと思います。写真の器は、イギリス人の友人が日本に来るときに、ハンドラゲッジにして持ってきてプレゼントしてくれた、アンティークのカップ&ソーサーのとケーキ皿のセットです。貴重なものだとわかっているので、使うことをためらってしまいがちですが、その度に「ロスチャイルド家の上流マナーブック」の文章を思い出します。お客様に出すように、ちゃんとセッティングして、花も添えて、ていねいにコーヒーを入れる。それは自分対してのリスペクトの形。誰よりも、自分が自分を認めてあげることーーときどきは、それを形にすることが大切なのではないでしょうか?

イギリスのブランド、スージー・クーパーの器。おそらく1930年代のもの。ピンクの繊細なバラの花の絵付けが、ほっと気持ちを和ませてくれます。