一方、さとみの話です。
前号で、石井杏奈さん演じる令和版のさとみは、物語の中盤から自立する道を選び始めると書きました。(「クララが立った事件→前号参照」)
でも、有森也実さん演じる平成版のクララさとみは、最後まで立たないんだ、これが。
平成版さとみと令和版さとみ。ここが違う
三上くんの浮気が判明したときには……
(平成版さとみ)「三上くんと別れるかどうかは、永尾くんが決めて」
(令和版さとみ)「私のこと、バカにしないで。あなたとは、別れる!」
って感じで、自分のことなのにカンチまかせなのが、平成のさとみ。
さらに平成版と令和版の違いが如実に現れるのが、ドラマのクライマックス。リカの元に駆けつけようとするカンチを引き止めるシーン。
(平成版さとみ)「リカさんのところに行かないで……。あ、ごめんなさい、私、何言ってるんだろう……」→カンチに抱きしめられる
(令和版さとみ)「リカさんのところに行かないで! 絶対に嫌!」→カンチに突き飛ばされる
って違いなんですよね。
ちなみにカンチを引き止めるシーンが流れた放送当時は、有森也実さんに脅迫状が届くほど、「さとみ憎し!」の投書が絶えなかったのだとか。
さとみに関しても、平成版は最後まで他者依存の強い女性として描かれているけれど、令和版は、自立した女に生まれ変わろうとする話だったなと思う。
そして最後に、三上くんも。
江口洋介さんが演じた平成版の三上くんが、単に女好きのプレイボーイなのに対して、清原翔さん演じる令和版の三上くんは、「父親から自立できない自分」をこじらせ、その鬱屈とした気持ちの吐け口を女の子に求める役柄。
父親が死んだことで、つきものが落ちたように一人の女性を愛せるようになる過程も、まさに自立への道だな、と感じるのです。
全体を通して、令和版「東京ラブストーリー」に出てくる男性陣は、平成版に比べて幼いなと思いました。カンチも三上君も。そして、リカと不倫する和賀部長も。
男が「大人の男」になるためにかかる時間は、昔よりも長くなっているのかもしれないですね。
というわけで、平成版をリアルタイムで見た私が、令和版をそれほど違和感なく楽しめたのは、すみずみ細かく改変された脚本のおかげだったのかも。
みなさんもぜひ、見比べてみてくださいませー。
次週は、現在進行形のドラマ、いきますね。
それではまた、来週土曜日に。
前回記事「女はだいたいハイジかクララ。『東京ラブストーリー2020』もやっぱり勝つのはクララ?」はこちら>>
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