米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に向き合う山田悠史医師に、新型コロナの後遺症について、現時点でわかることをまとめていただきました。

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【質問1】コロナの後遺症にもある、慢性疲労症候群とはどんな病気ですか? 


慢性疲労症候群とは、まさに読んで字の如くですが、慢性的に疲労が続いてしまう病気です。少なくとも半年間のうち半分以上を強い疲労に苛まれる場合、慢性疲労症候群が疑われます。

新型コロナウイルス感染症との関連性はまだ必ずしも明らかではありませんが、後遺症の患者さんを診療していると、それなりの数の方が該当するように思われます。

この慢性疲労症候群は、従来から「EBウイルス」と呼ばれるウイルスの感染症を代表としたウイルス感染の後に発症することが報告されてきました(参考1)。

症状には、疲れやすさの他に、集中力の低下、頭痛、筋肉痛や関節痛といった症状がみられるのが典型的です。

普段から運動をする方は、運動をした後にだるさや疲れがとれた、というのを経験したことがあるかもしれませんが、この慢性疲労症候群では、過度の運動で症状が悪化するのも特徴的です。

診断にあたっては、貧血や甲状腺の機能異常、睡眠時無呼吸症候群といった病気と症状が似るので、自己判断せず病院を受診していただくのが大切です。こういった病気の可能性を除外するための問診や診察、検査を行って、最終的に診断することができます。
 

【質問2】慢性疲労症候群の治療法はないのですか?


慢性疲労症候群を治癒する、効果のわかっている治療法は残念ながら見つかっていません。

体への負担が大きくなると症状が悪化するので、産業医などとも話をしながら、職場の環境調整が必要になることもあります。

睡眠がよくとれない、抑うつ症状があるなどという場合には、抗うつ薬を少量から始めることで症状の改善につながることがあると言われています。

また、頭痛や筋肉痛といった痛みの症状が強い方の場合には、痛み止めを用いることもあります。

先ほど運動で症状が悪化することがあると述べましたが、適度な運動を続けることで症状が改善する方もいるため、運動の強度や頻度について医師と相談することも大切です。自分のペースに合わせて、症状が悪化しない程度に無理のないエクササイズを続けることが助けになることもあります。

また、COVID-19の後にだるさが長引いてしまう場合の対処法として、「4つのP」という方法も知られています(参考2)。

 


このような工夫も、疲れの症状を緩和することにつながります。

治療法がまだ十分確立されていない病気ですが、今回の新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに得られた知見もまた、今後の病態解明や治療法の発見につながるかもしれません。
 

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参考文献
1    Katz BZ, Shiraishi Y, Mears CJ, Binns HJ, Taylor R. Chronic fatigue syndrome after infectious mononucleosis in adolescents. Pediatrics 2009. DOI:10.1542/peds.2008-1879.
2    Post COVID-19 Patient information pack. www.homerton.nhs.uk (accessed Jan 24, 2021).

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